平成18年度 伝音セミナー

第9回「富崎春昇の至芸を聴く」(開催報告)


■日時 2007年2月1日(木)午後2時〜4時
■担当 久保田敏子(企画)、竹内有一(ナビゲーター代行)
■協力 亀村正章

◆HP広報記事

前回の「声を使った芸を聞く」を受けて、地歌箏曲界で名人と謳われた盲目の音楽家・ 富崎春昇の至芸を聴きます。当センターにあるSP音盤と、別途入手した音源の中から、地歌三弦での弾き歌いで、三味線組歌破手組「京鹿子」、手ほどきもの「海老」、端歌もの「閨の文」、謡曲もの「八島」を、箏曲の弾き歌いで、箏組歌「菜蕗」、古今組「千鳥の曲」、地歌の語りものともいえる繁太夫物の「橋づくし」(『心中天網島』)、作物「寛闊一休」、「都十二月」などから適宜選んで聞き、名人の俤に迫り、その魅力を探ります。(久保田)

◆担当者コメント

企画を立て選曲を行った久保田が欠席のため、当日のナビゲーターを竹内が代行した。
伝記・事典・レコードアルバム等の記述を手がかりに、富崎春昇の人と芸について振り返り、別記する一覧のような曲目を聴いた。伝記資料に人柄を象徴するような写真がいくつか掲載されていたので、プロジェクターで投影して紹介した。
春昇の芸の特徴の第一は、繁太夫節など貴重な伝承曲を、師の宗順からよく伝えたことである。それは、覚えがよいが忘れるのも早い、という短所を努力で克服した成果であった。その美声については、元来の音痴を厳しい稽古で改善したのだと芸談に伝える。また、楽器に関わる工夫にも積極的に取り組んだ。糸の太さ、撥の形や大きさ、駒など、九州や他流もよく研究して工夫したという。谷崎潤一郎等の詞による新作にも恵まれた。繁太夫が縁で東京に移住したことにより、大阪在住時代のさまざまな苦労や努力が功績として認められ実を結んだ、強運の持ち主でもあった。(竹内)

◆視聴覚資料一覧

◇地歌・歌もの

  • 三味線組歌 派手組『京鹿子』(古曲保存会レコード123、124)
  • 端歌もの 手ほどき曲『えび』(『富崎春昇地唄集』コロムビアCLS-5158)
  • 端歌もの『閨の文』(『富崎春昇地唄集』コロムビアCLS-5157)
  • 地歌謡曲もの『八島』(国際文化振興会、コロムビア(ニッチク)KBS37)

◇箏曲・歌もの

  • 箏組歌『菜蕗』(『富崎春昇地唄集』コロムビアCLS-5158)

◇地歌浄瑠璃もの・作もの

  • 繁太夫節『心中天網島〜橋づくし』(古曲保存会レコード125〜134)
  • 同上(1950年録音SP、出典未詳)
  • 作もの『都十二月』(『富崎春昇地唄集』コロムビアCLS-5157)※時間の都合により視聴せず
  • 作もの『寛闊一休』(昭和二五年七月録音 出典未詳)※時間の都合により視聴せず

◇富崎春昇による芸談(一部演奏あり)(出典未詳)

◆配布資料
  • レジュメ(人物解説、曲目解説、歌詞、出典一覧)
  • 「地唄の唄いかた心得」(春昇談話の書き留め) 藤田俊一 1968 『富崎春昇芸談』日本音楽社、128-133頁
◆回覧・展示資料
  • 古曲保存会編 1921 『江戸時代音楽通解』、古曲保存会
  • 北条秀司 1954 『富崎春昇自伝』
  • 藤田俊一 1968 『富崎春昇芸談』、日本音楽社
  • 平野健次監修 1974 『富崎春昇地唄集』(LPレコード)、日本コロムビア
◆来場者

約20名

最終更新日:2007/08/22 | 公開日:2007/08/22