日本音楽学会(The Musicological Society of Japan)
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■日本音楽学会西日本支部 第36回(通算387回)例会

日  時 : 2017年1月14日(土)14:00〜
会  場 : 同志社女子大学今出川キャンパス純正館S104教室
アクセス : 地下鉄今出川駅(3番出口)より東へ徒歩5分
地  図 : http://www.dwc.doshisha.ac.jp/access/imadegawa/
例会担当 : 椎名亮輔(同支社女子大学)
司  会 : 仲万美子(同支社女子大学)
内  容 : 講演・研究発表

■日本音楽学会西日本支部 第35回(通算386回)例会

日  時 : 2016年12月17日(土)14:30〜17:00
会  場 : 大阪市立大学杉本キャンパス 田中記念館2F会議室(正門の西隣、阪和線沿いの建物)
アクセス : JR阪和線杉本町駅下車徒歩3分。詳細は下記ウェブサイトをご参照ください。
地  図 : http://www.osaka-cu.ac.jp/ja/about/university/access#sugimoto
例会担当 : 増田聡(大阪市立大学)
内  容 : 研究発表

    研究発表
    1.秋吉康晴(京都精華大学)
     レコードの考古学——フォノグラフ、あるいは「音を書くこと」の含意について

     フォノグラフ、グラフォフォン、グラモフォン——これら黎明期の録音技術はいずれも「音を書く」という意味をもつことが知られている。古くからある書字の限界を超えて、音そのものを書き取ること。それこそが蓄音機に与えられた役割だったのである。
     では、そのような新しい書字の技術としての蓄音機は、どのようにして誕生したのだろうか。キットラー以来、その由来は多くの場合、フォノトグラフのような音響記録の技術に求められてきた。ところが、エジソンがフォノグラフを発明した経緯を調査すると、彼はもともと音の記録というよりも合成をおこなおうとしていたということが分かってきた。つまり、エジソンは音響として再生されうるパターンを物体に刻むことで、言語音を自在に生成することを目論んでいたようなのである。本発表ではそうした蓄音機の由来に着目することで、「音を書くこと」が記録を超えた含意をもっていたことを明らかにしたい。

    2.ベニー・トン(オーストラリア国立大学大学院、大阪大学招聘研究員)
     音楽を通して考える老後生活――カラオケ喫茶・教室における日常的実践

     日本のポピュラー音楽の人類学的な研究では、若者たちが集う音楽の現場とジャンルに関する調査が殆どである。しかし、高齢化社会である日本では、多くの年配者もポピュラー音楽に深く関わっており、その音楽行動は彼らの日常生活の不可欠な一部である。発表者は、ポピュラー音楽研究における高齢者文化の空白を埋めるため、年配の参加者が多いカラオケ喫茶と教室に注目する。東京と大阪での参与観察調査と聞き取り調査を通じて、高齢者がいかにカラオケの場で音楽と関わるかを調べてきた。
     本研究では、イアン・コンドリーの「ゲンバ」の概念とサイモン・フリスやティア・デノラが強調する音楽の感情的および身体的な側面についての議論を参考にし、カラオケ喫茶と教室における日常的な音楽実践を通じて、高齢者の生活における身体性、社会性と心性について検討する。さらに、そこで歌われる演歌や歌謡曲というジャンルのありかたについても考察する。



■日本音楽学会西日本支部 第34回(通算385回)例会

日  時 : 2016年9月3日(土)14:00〜16:30
会  場 : キャンパスプラザ京都(正式名・京都市大学のまち交流センター)2階第2会議室
アクセス : 京都市営地下鉄烏丸線、近鉄京都線、JR各線「京都駅」下車。徒歩5分。詳細は下記ウェブサイトをご参照ください。
地  図 : http://www.consortium.or.jp/about-cp-kyoto/access
例会担当 : 今田 健太郎(四天王寺大学)
内  容 : ラウンドテーブル

    〈ラウンドテーブル〉 日本映画における楽曲の「流用」――映画音楽と意味作用

     映画音楽は、各映画作品のなかで何らかの「意味」をまとい、映画体験に寄与する。だがその意味作用のあり方は多様である。秋山邦晴の仕事に顕著にみられるとおり、日本の映画音楽の歴史記述ではしばしば無調音楽や電子音楽、邦楽器の使用といった現代音楽の関心にもとづいた考察がなされる傾向にあったが、こうした音楽は「日常/非日常」「伝統/前衛」「西洋/日本」といった特有の意味の文脈を呼び込むことが多い。当企画では映画音楽における楽曲の「流用」という少し別の観点から、とくに1950~60年代の日本映画を中心的な対象として、映画音楽の意味作用を再考したい。単独作品のなかでの同一素材の流用、作曲家による特定の主題の流用、映画での既成曲の流用をめぐり、3名の登壇者による武満徹、芥川也寸志、木下忠司らについての報告のあと、フロアも交えた討議をおこなう。

    ◎報告者
    久保 豊(非会員、京都大学大学院)
    柴田 康太郎(東京大学大学院)
    藤原 征生(京都大学大学院)

    ◎討論者
    長門 洋平(非会員、国際日本文化研究センター技術補佐員)
    白井史人(早稲田大学演劇博物館連携研究拠点研究助手)

    ◎司会・コーディネーター
    今田 健太郎(西日本支部、四天王寺大学専任講師)


■日本音楽学会西日本支部 第33回(通算384回)例会

日  時 : 2016年7月9日(土)14:00〜
会  場 : 西南学院大学 西南コミュニティーセンター1階「多目的室」
アクセス : 福岡市営地下鉄空港線「西新」駅3番出口より徒歩3分  詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.seinan-gu.ac.jp/accessmap.html
例会担当 : 松田聡(大分大学)
内  容 : 研究発表、特別講演

    研究発表 
    1.丸山千鶴
     全面的セリー主義音楽におけるセリー組織外の要素の知覚への影響について ―シュトックハウゼンの《Kreuzspiel》とブーレーズの《Structures Ia》を中心に―

     本発表は、全面的セリー主義音楽を、純粋に、鳴り響く音楽として聴取し、その聴こえる構造について検討するものである。
     聴取によって知覚される音楽現象には、セリー組織が関わって生じるものもあるが、様々な条件が重なることによって偶然に生じるものや、セリー組織に属していない要素が関わって生じるものも多い。
     全面的セリー主義音楽であっても、セリー的組織化の対象とされていない要素は存在している。そのような要素は、セリー組織に関わっていないため、殆ど注目されることのない要素であるが、それらの中には、作曲者によって、セリー的ではないにせよ、恣意的な操作をされているものもある。このようなセリー組織外の要素の取り扱い方が、知覚される音楽現象に違いをもたらしているのではないか。
     本発表では、シュトックハウゼンの《Kreuzspiel》とブーレーズの《Structures Ia》を中心に、セリー組織外の要素に焦点を当て、その取り扱い方が知覚にもたらす影響について考察する。

    特別講演
    2.Su Yin Mak(香港中文大学)
     Staging musical structure: methodological interactions between music theory and ethnomusicology in rehearsal analysis(英語による講演。通訳付き)

    講師プロフィール
    香港中文大学(The Chinese University of Hong Kong)音楽学部准教授。トロント大学で英文学と音楽の学士号、ニューヨーク市立大学クィーンズ校で音楽学の修士号、ロチェスター大学イーストマン音楽学校で音楽学と音楽理論の博士号(ダブルディグリー)を取得。シェンカー分析、調性音楽における歌詞と音楽の関係、音楽記号論、音楽理論史、分析と演奏の相互作用といった領域で学際的な研究を展開。著書Schubert’s Lyricism Reconsidered(2010)の他、Journal of Musicologyの論文“Schubert’s Sonata Forms and the Poetics of the Lyric”(2006)で、2008年にアメリカの音楽理論学会からEmerging Scholar Awardを受賞。


■日本音楽学会西日本支部 第32回(通算383回)例会

日  時 : 2016年6月25日(土)14:00より
会  場 : 大阪大学豊中キャンパス文13教室
アクセス : 阪急宝塚線「石橋駅」下車、東へ徒歩20分。詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/
例会担当 : 輪島裕介(大阪大学)
内  容 : 修士、博士論文発表、話題提供

    修士論文発表 
    1.青嶋絢(大阪大学大学院)
     アール・ブラウン Novara における「開かれた形式」−デザインされた音響と演奏者の自由裁量−

     アール・ブラウン(Earle Brown, 1926-2002)は、アメリカ実験音楽家グループとして知られるニューヨーク・スクールの一員で、音楽における不確定性、即興、記譜法の革新に対して独自の表現を追求した。その経歴は異色で、ジャズミュージシャンから出発し、音楽を数理的に解釈するシリンガー理論を学び、50年代以降アメリカ、ヨーロッパにおいて前衛音楽の旗手として活躍した。
     ジャクソン・ポロックの抽象絵画、アレクサンダー・カルダーのモビールなど同時代の美術表現に触発され、伝統的記譜法を排した図形楽譜、譜面を動かし演奏する「可動の形式(mobile form)」、演奏家の裁量により音楽が成立する実験的な作品を発表し、後にそれらの手法を統合した「開かれた形式(open form)」を確立した。  このように、ブラウンは革新性と独創性を備えた作曲家であったにもかかわらず、その作品や生い立ちに関する研究は多くはない。この問題を克服するため、修士論文ではブラウンの経歴について調査を行い、初期から中期にかけての作品についてコンセプトと楽曲構造の両面から分析を試みた。本発表では、ブラウン中期作品『Novara』の楽曲分析から明らかになった音楽構造を展観し、ブラウン作品の根幹をなす「開かれた形式 」について考究したい。

    博士論文発表 
    2.吹上裕樹(関西学院大学)
     社会を媒介する音楽――「出来事」の生成理論をめざして

     本報告は、「音楽の社会性とは何か」という音楽社会学の根本的な課題について、「音楽的媒介」の視点を通じてあらためて検討するものである。「音楽的媒介」の視点とは、音楽を可能にする人々の行為や事物の働きと、そうした行為や働きを可能にする音楽自身の働きの両者に照準し、それらの同時的生成を考えるものである。従来の芸術社会学・文化社会学は、音楽をその社会的機能や役割の面から説明してしまう傾向があった。また、近年のポピュラー音楽研究や、カノン、ジェンダー、ナショナリズムといった新たな視角に基づく音楽研究が音楽と社会との関わりを問題化しているとはいえ、その対象が音楽である必然性が曖昧になっている。これに対して、「音楽的媒介」の視点は、音楽を聴き、演じる人々の具体的経験に照準し、そのような経験が生起する「出来事」性を記述することで、音楽の社会学的研究に新たな方向性を拓くことができると考える。


    話題提供
    3.尾鼻崇(中部大学)
     映像音響研究のパースペクティブ

     今日において、映像メディアの音響を対象とした研究は活発化してきており、その成果の蓄積も順調に進むようになってきている。発表者もまた、映画・アニメーション・ビデオゲームといった映像メディアの音響面を対象に研究を進めてきており、その一部は『映画音楽からゲームオーディオへ:映像音響研究の地平』(2016)の刊行をもって公開を行っている。
     今回の発表では、拙著をたたき台の一つとし(特に発表者が研究フィールドとしてきた物語映画やビデオゲームを中核としつつ)、映像メディアを音響面から検討するためのアプローチにはどのような方法がありうるのかをまずは整理したい。その上で、多種の映像メディアが氾濫する現代社会において、映像音響研究を進めることにどのような意義が考えうるのかをフロアとの議論も踏まえて検討することで、本研究分野のさらなる発展の一助としたい。


■日本音楽学会西日本支部 第31回(通算382回)例会

(東洋音楽学会西日本支部定例研究会との合同)
日  時 : 2016年5月28日(土)13:30-17:00
会  場 : 大阪音楽大学 第1キャンパスF号館 F-215教室(豊中市庄内幸町1-1-8)
アクセス : 阪急宝塚線「庄内駅」下車、徒歩8分。詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.daion.ac.jp/about/a5a6tu0000000mph.html
例会担当 : 井口 淳子(大阪音楽大学)
内  容 : 修士、博士論文発表、小泉文夫音楽賞受賞記念講演

  • 第I部 13:30-

    修士論文発表 
    1.秋山良都(大阪大学文学研究科博士後期課程/日本学術振興会特別研究員)
     ポザウネンコアの民族誌―共属感情の経験としての音

     ポザウネンコア(Posaunenchor)は、ドイツの福音主義教会に見られる金管合奏である。19世紀前半の信仰覚醒運動での信徒活動に始まり、ヨハネス・クーロー(1851~1941)らの影響で現在のドイツ全域に結成された。現在、ドイツに約105,000団体、約7,000人の活動がある。トランペットとトロンボーンを中心とした金管楽器のみによる四声部の編成を基本とし、讃美歌がレパートリーの中心である。
     本修士論文は、発表者が2014年4月~2015年3月にゲッティンゲンのポザウネンコアで実施した参与観察を基軸とするフィールドワークに基づいている。年齢、社会的背景、さらにキリスト教の信仰態度までもが様々に異なるメンバーは、合奏でつくりあげる〈一体となった音響〉への没入で、〈ゲマインシャフト〉の感情、すなわち「共属感情」を経験し、「家族」と形容しうるような社会関係を築く。本発表では、ポザウネンコアの諸実践を紹介しながら、この音楽活動の目的と価値観についての考察を報告する。

    博士論文発表 
    2.宮内晴加(関西学院大学大学院研究員)
     アントニオ・ソレールの鍵盤ソナタにおけるフィギュレーション

     18世紀のスペイン人作曲家の作品は、現在もあまり知られていない。それは現存する作品数が少なく、またヨーロッパ中央から離れているため関心を引いてこなかったためである。その中で、スペイン王子ドン・ガブリエルの音楽教師も務めたアントニオ・ソレールAntonio Soler(1729-1783)の144曲に及ぶ鍵盤ソナタは、当時のスペインの鍵盤音楽を知る上で重要な手掛かりとなる作品である。
     彼のソナタの多くは単一楽章で書かれ、その中に難度の高い演奏技巧、予想外の自由な転調などが豊富に盛り込まれているのであるが、これまでのソナタ研究では形式を主とした様式分析に重点が置かれ、実際にはこの様式において重要な働きをしている表現形態、すなわちフィギュレーションは研究されてこなかった。
     そこで本発表では、ソレールのソナタに基本的な考察を加えたあと、ソナタのフィギュレーションに焦点を当てる。どのようなフィギュレーションが使用されているのか、まず特徴的なフィギュレーションを取り上げ、それらをいくつかにグルーピングする。そして、それらの各フィギュレーションとソナタの形式との関係を検討し、フィギュレーションの点からソナタの分類を試みる。さらにソナタ全体におけるフィギュレーションの扱われ方について確認する。
     また、ドメニコ・スカルラッティDomenico Scarlatti(1685-1757)とセバスティアン・アルベロSebastian Albero(1722-1756)のソナタのフィギュレーションにも触れ、ソレールのソナタとそれらにおけるフィギュレーションの音楽的共通点、相違点を考察し、ソレールの音楽の独自性とその歴史的位置を探る。


  • 第II部 小泉文夫音楽賞(2015年度)受賞記念講演
    司会:中川眞(大阪市立大学)

    マーガレット・カルトミ Margaret Kartomi (モナシュ大学教授)
     “On the cusp of music and dance: body percussion as a trans-cultural phenomenon and expression of identity and social change in Aceh, Sumatra”

    受賞理由:東南アジアにおける音楽文化の多様性を、歴史学的並びに音楽様式学・楽器学的観点から明示した功績に対して

    【紹介】Margaret Kartomi マーガレット・カルトミ氏(モナシュ大学教授)は東南アジア、特にインドネシアの音楽研究で顕著な業績をあげてきた。フィールドワークはスマトラ、ジャワ、カリマンタン、マルク、フローレスの島々に及び、特にスマトラ島の研究では他の追随を許さない(Musical Journeys in Sumatra『スマトラの音楽の旅』 2012 イリノイ大学出版)。研究の射程は幅広く、他にオーストラリアの先住民族、インドネシアの華僑、オーストラリアのユース・オーケストラなどが考察の対象となっている。彼女の研究の特色は歴史的な側面(垂直方向)と、現代社会における相互連関(水平方向)を同時に扱う点であり、社会学や人類学、歴史学の知見を取り込んだ、独特の民族音楽学の理論、方法論を編み出したところにある。また楽器学の分野でも顕著な業績を残したことで知られている(On Concepts and Classification of Musical Instruments『楽器の概念と分類』 1990、シカゴ大学出版)。教育にも力を注ぎ、モナシュ大学(オーストラリア)では45年間教鞭をとって多くの有為の後進を育てるとともに、多彩なワークショップを民族音楽学会等で行うなど、グローバルな活躍によって研究者ネットワーク構築に貢献している。上記の『スマトラの音楽の旅』のなかの論文では第2次世界大戦時の南スマトラにおける日本影響下の音楽など、我が国の南方政策と交差する問題を扱っている点も注目される。他の主な著作に The Gamelan Digul and the Prison-Camp Musician Who Built it: An Australian Link with the Indonesian Revolution (2002、ロチェスター大学出版)がある。


■日本音楽学会西日本支部 第30回(通算381回)例会

日  時 : 2016年3月12日(土)14:00〜17:00
会  場 : エリザベト音楽大学507教室
アクセス : JR広島駅南口より徒歩12分。路面電車またはバスで銀山[かなやま]町停留所下車徒歩4分
地  図 : http://www.eum.ac.jp/cms/site_ja.nsf/page/Access.html
例会担当 : 井口 淳子(大阪音楽大学)
司  会 : 馬場 有里子(エリザベト音楽大学)
内  容 : 研究発表・話題提供

  • 研究発表

    1.光永誠(九州大学大学院芸術工学府)
     西洋における鍵盤の出現と展開 -- マクルーハンのメディア論を手がかりにした考察

     ピアノやオルガンに代表される7個の全音階音、5個の半音階音を持つ鍵盤は 西洋にのみ特徴的なものである。鍵盤の出現がなぜ西洋で起こったか。そして鍵盤が西洋音楽に与えてきた影響とは何か。本発表では、これらの根源的な問いへの新たなアプローチとして、カナダの英文学者M. マクルーハン(1911~1980)の言うところのメディアとして鍵盤を捉え直す。今日的な鍵盤がほぼ成立した14世紀までの鍵盤の製造技術の分析を通して、鍵盤メディアの「メッセージ」(鍵盤メディアが社会にもたらす新しい尺度)を明らかにする。
     西洋における鍵盤の出現には特に二つの技術的な革新が欠かせない。半音階音の追加と力の転送による小型化である。最古の鍵盤楽器である紀元前3世紀のヒドラウリス(水オルガン)の頃から中世までの オルガンの鍵盤は、ダイアトニック的であった。しかし14世紀の初頭までには、半音階音を二列目に追加することが行われた。同時期に鍵盤の内部メカニズムにも変化があった。中世までのオルガンのスライダーメカニズムでは、鍵盤の位置はパイプの間隔に制限されていた。しかしトラッカーメカニズムの発明により、パイプの位置と関係なく鍵盤を配置することができるようになった。結果として鍵盤は手で演奏するものから指に合うよう小型化していった。以上の二つの技術革新により、今日の鍵盤が形作られた。
     この時鍵盤は、音を半音階に限定する代わりに定型を得た。また力の転送によって楽器の発音機構によらずほぼ同様に操作できるようになった。すなわち鍵盤は聴覚的、触覚的な要素を衰退させ、むしろ視覚的なパターンに音を結びつけることで、整律の概念へとつながる合理性と強力な実用性を生み出したのである。マクルーハンは印刷術が西洋に視覚的な活字文化をもたらしたことを指摘した。鍵盤もこの視覚性ゆえに、西洋の近代音楽に合理性を与えたと言えるだろう。

    2.大迫知佳子(日本学術振興会特別研究員PD、京都大学人文科学研究所)
     F. –J. フェティス vs. F. -A. ヘファールト -- 19世紀ベルギーにおける和声理論史論争

     西洋音楽史において、和声と結びついた近代の「調性」がいつどのように成立したかという問題は、音楽理論史研究者たちによって様々に論じられてきた。この議論には、現ベルギー出身の音楽理論家フランソワ=ジョゼフ・フェティス(1784-1871)が、「調性」という言葉を定義づけ、和声的な調性の起源を巡る「現代の調性」概念を理論化したことが深く関わっている。
     本発表は、フェティスとフランソワ=オーギュスト・ヘファールト(1828-1908)の間に起こった和声的な調性の起源に関する論争に焦点を当て、両者の考えを比較することを通じて、フェティスの「現代の調性」理論の輪郭を明らかにし、調性理論の歴史におけるその位置づけを考察することを目的とするものである。
    2人の論争は、1868年から1869年にかけての音楽誌上で繰り広げられた。同論争は、フェティスが自身の「現代の調性」理論を発表した際に寄せられた匿名の批判に始まり、以降、カール・プロスク(1794-1861)、ラファル・ゲオルグ・キーゼヴェッター(1773-1850)、そしてカミーユ・デュルット(1803-1881)ら多くの理論家達がフェティスの調性起源論に挑んでゆく。従って、フェティス晩年におけるヘファールトとの論争で、その論争の発端となる理論の提唱者と同時代の理論家との間に起こった直接の議論に一応の終止符が打たれたことになる。
     発表ではまず、1868年までに起こったフェティスと諸理論家による調性起源論争について整理し、論争の史的推移を確認する。次に、フェティスとヘファールトの論争に見られる理論・思想的対立点を、その背景と併せて明らかにする。最終的に、「現代の調性」を過去からの転換とみなすフェティスの考え方を、過去の諸要素の集約とみなすヘファールトとの対比において歴史的に位置づけ、機能和声的な調性へと発展する調性概念の変容過程の一端を示したい。

  • 話題提供

    3.佐々木悠(エリザベト音楽大学)
     アルシス、テーシス、キロノミーはもう存在しない?? -- グレゴリオ聖歌研究の今

     グレゴリオ聖歌研究はこの20年余りで大きな変化を遂げた。セミオロジーが確立され、ソレム楽派によって提唱されていたいくつもの仮説は既に過去のものとなっている。そこには、アルシス、テーシス、キロノミーなど、我が国でも馴染みのあるものが多数含まれている。演奏の考え方も大きく変化してきており、その勢いは止まるところを知らない。
     しかし、このような状況はほとんど日本に伝えられずにいる。文献も20世紀中頃に書かれたソレム楽派の伝統を引き継ぐものしかなく、新しい研究書の翻訳などは皆無である。発表者も、つい最近までそのような書籍しか知らずにいた。ところが、昨年から大学の研修の一環として、エッセン芸術大学主催の国際グレゴリオ聖歌学セミナーに参加することを許され、発表者は言葉では言い尽くせないほどの衝撃を受けることになった。
     多情報を新しくする必要があり、まだ整理が充分につかない点もあるが、今回の例会では、グレゴリオ聖歌研究の昔と今を紹介したい。

■日本音楽学会西日本支部 第29回(通算380回)例会

日  時 : 2015年12月19日(土)14時30分から
会  場 : 同志社女子大学今出川キャンパス純正館4階S402教室
アクセス : 地下鉄今出川駅(3番出口)より東へ徒歩5分
地  図 : http://www.dwc.doshisha.ac.jp/access/imadegawa/
例会担当 : 椎名亮輔(同支社女子大学)
内  容 : 話題提供・研究発表

  • 話題提供

    1.川崎弘二(フリーランス)
     「武満徹の電子音楽」(雑誌「アルテス」連載)における調査・研究──1950年代を中心に

     作曲家・武満徹は日本におけるミュジック・コンクレートを創始した人物の一人である。報告者は音楽雑誌「アルテス」において、2011年から「武満徹の電子音楽」というエッセイを連載してきた。このエッセイにおいて、報告者はミュジック・コンクレートだけでなく、武満が電子テクノロジーを援用して制作した放送メディアや映像メディアのための作品、そして、舞台のための作品なども扱い、各種資料や音響のスペクトログラム解析などによって、その創作の一端についての調査を続けている。本報告では、1950年代に武満が手掛けた「ルリエフ・スタティク」や「ヴォーカリズムA・I」などのミュジック・コンクレートを中心に、その作曲の手段や、制作背景なども含めて検討したいと考えている。

  • 研究発表

    2.椎名亮輔(同志社女子大学)
     フランス電子音楽の生成期:リュック・フェラーリ周辺の人物たちへのインタビューをめぐって

     椎名は、同志社女子大学教育・研究推進センターの助成金を受けて、2015年12月初旬にパリに滞在し、リュック・フェラーリ生前に彼の周囲にいて様々な面で関係を保っていた人物たちにインタヴューを行うというプロジェクトを実現した。インタヴューの対象は、ジャック・ブリソ、ダニエル・テルッジ、ダヴィッド・ジス、フィリップ・ミュクセル、アンヌ・ミュクセル、そしてジャクリーヌ・コーとアレサンドロ・メルクーリの各氏である。彼らの証言から、ピエール・シェフェールを中心として、ピエール・アンリ、リュック・フェラーリらが発展させた、フランス電子音楽の生成期の生な姿が浮かび上がってくるであろう。

    3.筒井はる香(同志社女子大学)
     ドイツにおけるヘールシュピールの発展――リュック・フェラーリ作品へのアプローチ――

     フランスの作曲家、リュック・フェラーリ(1929-2005)は多くの「ヘールシュピール」を書いた。一つのヘールシュピールは、一時間から一時間半の長さある大形式の作品で、フェラーリはそこに音楽作品の作曲と同じくらいのエネルギーを投入したのである。
     ヘールシュピールとは、録音された音を使って物語を聴覚的に演出し、スピーカーを通して伝えるラジオ独自の聴芸術である。1920年代からドイツを中心に発展し、現在もドイツ語圏を中心に享受されている。日本にもラジオドラマは存在するが、音響芸術としてのヘールシュピールはほとんど普及されていないといってよいのではないか。フェラーリの作品を正当に評価するためには、その定義や歴史背景を知ることは必須であろう。
     1920年代から1960年代までのヘールシュピールの発展を扱った先行研究にフランク・シェッツラインの「ヘールシュピールの制作過程とステレオ」(1995年)がある。ここでは、生の芝居や文学作品の朗読を放送していた従来の伝統的なヘールシュピールに対して、言葉ではなく音響を重視した新しいヘールシュピールの制作が1960年代後半に始まり、エルンスト・ヤンドルとフリーデリケ・マイレッカーの《5人の人間》において作家の役割や制作過程が大きく変化したことが論じられている。
     本発表では、シェッツラインの主張に依拠しつつ、新たな視点をいくつか付け加えたい。第一に、1960年代以前に音響を使った試みがなかったわけではない。1930年に放送されたヴァルター・ルットマンの《ウィークエンド》は新しいヘールシュピールの先駆的な存在であることを示したい。また1970年代以降、新しい録音技術や再生技術の開発がヘールシュピール制作に影響を与えたことを示し、このような文脈にフェラーリのヘールシュピール作品を据えることによって作品のもつ独自性を浮かび上がらせることができる。

■日本音楽学会西日本支部 第28回(通算379回)例会

(日本ポピュラー音楽学会関西地区2015年第3回例会と合同開催)

日  時 : 2015年10月3日(土)15:00-17:30
会  場 : 京都精華大学ポピュラーカルチャー学部 友愛館Y-005
アクセス : 京都市営地下鉄国際会館駅からスクールバスで10分、または叡山電鉄鞍馬線京都精華大学前駅すぐ。詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.kyoto-seika.ac.jp/about/access/
会場地図 : http://www.kyoto-seika.ac.jp/about/map/
例会担当 : 増田聡(大阪市立大学)
内  容 : 研究発表、話題提供

  • 研究発表

    1.白石知雄(大阪音楽大学)
     大栗裕の採譜の実際 - 「大栗文庫」所蔵資料の2015年度再調査報告を中心に

     発表者は、船場島之内出身の作曲家、大栗裕(1918-1982)の自筆譜等を集約した大阪音楽大学付属図書館大栗文庫の移転(移転先は近日発表予定)に先立ち、準備作業として本年4月から所蔵資料を再調査する機会を得た。この発表では、新たに発見された管弦楽のための組曲「雲水讃」(昭和36(1961)年文部省芸術祭参加作品)の草稿(京都吉祥院六斎念仏の録音を採譜した楽譜帳)の概要を紹介し、没後「大阪のバルトーク」と喧伝されることすらあったこの作曲家の民俗的な素材の取り扱いの実態と、その意義を批判的に考察する。
     「雲水讃」(初演稿全3楽章の第1、3楽章、改訂稿全2楽章の第2楽章)は、吉祥院天満宮大祭(毎年8月25日)の芸能を、おそらく委嘱元である朝日放送の協力を得てオープンリールテープに収録して、その音源を採譜した素材にもとづいて作曲されている。発表者の調査では、大栗裕がバルトークに擬せられる発端、遠因はこの作品であった可能性が高い。
     しかし各種資料を照合すると、録音の取り扱いにはいくつかの不備が認められる。
     日本の伝統芸能に立脚した創作を主張する武智鉄二(1955年の歌劇「赤い陣羽織」の演出家)の感化、1956年の「大阪俗謡による幻想曲」の成功を受けた続編的な新作への期待、ラテン音楽(ニューリズム)の流行に煽られて「和製サンバ」と評された京都の六斎念仏への注目度など、このような作品が書かれねばならない外的条件が整い、いわば外堀が埋められた状況で、作曲者は半ば意識的、半ば無意識的に課題をやり過ごし、身を翻したように見える。
     新技術(テープ録音)が投入された晴れがましい企画を曖昧に切り抜ける態度は、作品の欠陥、当事者の能力不足を疑わざるを得ないが、難局に直面した売れっ子ならでは図太さ、しぶとさが、創作を次の段階へ推し進める。本作以後、大栗裕に自ら取材・録音した音源を用いた作例はない。発表者はこの作品を、失敗することに成功した作曲者の転回点と位置づける。

  • 話題提供

    2.安田昌弘(京都精華大学)
     音楽と場所

     特定の場所と結びつけて語られる音楽は多いが、その結びつき方は一様ではない。ある場合にはそれは、音楽的要素によって説明されるが(例えば特定の音色や音階、韻律が特定の場所と結び付けられる)、他の場合では社会的/文化的背景によって説明される(そこでは音楽は、特定の時代・場所における政治的・経済的・文化的状況の表現とされる)。このようにして考えると、音楽と場所を結びつける根拠は一貫性を欠き、場合によっては恣意的にさえみえる。それにもかかわらず、我々は音楽と場所を結びつけることをやめようとしない。それはなぜか? 本発表では、主にデヴィッド・ハーヴェイの空間分類とその間の相互介入という議論を参照し、音楽と場所の結びつきについて改めて検討する。
    なお、12月に京都精華大で開催される日本ポピュラー音楽学会全国大会では、京都という具体的な場所を対象とし、「音楽と場所」について多面的に検討するシンポジウムを開催する。本報告はその予告として位置付けられる。

  • 例会終了後、京都精華大学ポピュラーカルチャー学部の録音スタジオ「Magi Sound Studio」の見学会を行います。

■日本音楽学会西日本支部 第27回(通算378回)例会

日  時 : 2015年7月11日(土)14:00-
会  場 : 西南学院大学 西南コミュニティーセンター1階「多目的室」
アクセス : 福岡市営地下鉄空港線「西新」駅3番出口より徒歩3分  詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.seinan-gu.ac.jp/accessmap.html
例会担当 : 松田聡(大分大学)
連絡担当 : 栗原詩子(西南学院大学)
内  容 : 研究発表

  • 博士論文発表

    1.中村滋延(九州大学)
     演奏ソフトウェアアートの創造特性と可能性――構造の応用から構造の創造へ

     今日、コンピュータ音楽という名で認識されている音楽はきわめて多様である。電子音楽や具体音楽のように現代音楽の下位ジャンルとしての音楽もコンピュータによって作曲される。ただしこれらの音楽ではコンピュータは便利な道具として使用されているだけで、コンピュータとその音楽内容との間には必然的な結びつきはない。その一方でコンピュータが作品内容と深く結びついたものがある。これを演奏ソフトウェアアートと呼ぶ。制作者は楽譜を書かずに代わりにプログラムを書く。制作者の多くは作曲技法を持たない。その音楽はその上演にコンピュータへの入力を要求するインタラクティブな仕掛けを持つ。入力を触発するためにコンピュータモニターの画像は美的に構成されている。発表者はこれまでにこうした演奏ソフトウェアアートに数多く接してきたが、音楽関係者の無理解にさらされることが多かった。その無理解の原因は「作曲」という創造行為についての因襲的な「思い込み」にある。この思い込みを「構造の応用」としての作曲と「構造の創造」としての作曲との対比によって説明し、その後者である演奏ソフトウェアアートの創造特性と可能性を説く。

    2. 西田紘子(九州大学)
     点・線・面による音楽の視覚化の歴史的一断面――1920年代ドイツ語圏を中心に

     1920年代のドイツ語圏で活動した「エネルギー学派」の理論家たちは、音楽作品を力動的に捉えるため、解釈・分析に線などを用いた。造形を含む美術分野でも、バウハウスで活躍した理論家たちは自らの造形論を音楽的に解釈することを試みた。本発表では主としてハンス・メルスマン(Hans Mersmann)、ワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky)、パウル・クレー(Paul Klee)らの試みや狙いに見られる手法上の共通点・相違点を明らかにし、その関連性や思想的背景を探ることを目的とする。
     彼らの試みの根底には、音楽や美術の創作方法および分析法を抽象化・純粋化――カンディンスキーの語を借りれば「絶対」化――したいという欲望が読みとれる。その手段のひとつが、一方の芸術論に他方の語彙やパラメータをもちこむ、すなわち両芸術の語彙と手法を交換し合う(「翻訳」し合う)ことで、方法論上の純粋性を獲得することであった。その可能性とその狙いを検討したい。


■日本音楽学会西日本支部 第26回(通算377回)例会

日  時 : 2015年6月20日(土)14:00-17:00
会  場 : 大阪大学 豊中キャンパス文法経講義棟文13教室
アクセス : 阪急石橋駅より東へ徒歩約20分。詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/accessmap.html
例会担当 : 輪島裕介(大阪大学)
内  容 : 博士論文発表、話題提供

  • 博士論文発表

    1.乗松恵美(京都市立芸術大学)
     「ヒロシマ」を題材とした声楽作品によるアウトリーチ活動

     「ヒロシマ」を題材とした声楽作品は戦後~現在まで1800曲余り制作されているものの、それらの作品の殆どは演奏される機会がなく資料と化している。本論ではそれらの作品の中から、筆者が演奏を行うことを前提とした独唱作品を選出し、作品研究を行う。また、作品研究の結果考察した各曲の特徴を踏まえ、アウトリーチ演奏の形での作品紹介プログラムを考案し、数例の実践演奏を行った。更に、アウトリーチ演奏を通し、作品を普及するだけでなく、観客に平和について考えるきっかけを与えることで、平和活動の一端に寄与することを目的とし、演奏者として社会参加する有り方について考察する。

    2.栗山新也(日本学術振興会特別研究員PD)
     芸能実践の豊かさを生きる ―沖縄移民の芸能から広がる人やモノのつながりの研究―

     本研究は、近代の沖縄の移民や出稼ぎが成し遂げてきた芸能実践の豊かさを、沖縄から多くの人びとが移動した大阪・南洋群島・ハワイまでを含む広大な地理的空間において描きだすものである。報告では、芸能実践の豊かさの定義と、それを記述するための方法論を説明した上で、移民・出稼ぎ地を巡業した沖縄芝居、沖縄とハワイとの間を行き交う三線やレコードを事例に、そこで織りなされる人びとやモノの諸関係について述べたい。

  • 話題提供

    3.谷口文和(京都精華大学)
     音楽学にとっての音響メディア研究

     報告者が共著者となって5月に刊行した『音響メディア史』では、さまざまな音楽文化や音楽表現についても、レコードやラジオなどのメディアを介した音の経験という観点から取り上げている。こんにちでは、音楽に接する経験の大部分において音響メディアは無くてはならないものとなっている。しかし一方で、音響メディアにもとづく音楽のあり方に着目した音楽学的研究は、いまだ充分に根付いているとは言いがたい。
     ここでは、音響メディアに関心を向けることが音楽学にとってどのような意義を持つのか、どのような研究アプローチがあり得るかについて、現在の研究動向にも触れながら改めて検討する。これを一つの問題提起として、フロアからの活発な議論を求めたい。


■日本音楽学会西日本支部 第25回(通算376回)例会

東洋音楽学会西日本支部第267回定例研究会との合同
日  時 : 2015年5月23日(土)13:00-17:00 ※博物館見学希望者の方は11:50に大学正門にお集まりください
会  場 : 大阪音楽大学 第1キャンパスF号館 F-251教室(豊中市庄内幸町1-1-8)
アクセス : 阪急宝塚線「庄内駅」下車、徒歩8分。詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.daion.ac.jp/about/a5a6tu0000000mph.html
例会担当 : 井口 淳子(大阪音楽大学)
内  容 : プレイベント、修士論文発表、小泉文夫賞受賞記念講演

  • プレイベント 12:00-12:40
    大阪音楽大学音楽博物館・関西洋楽史資料紹介
    大学創立100周年を記念して現在公開中のウェブ・ヴィジュアル年表に掲載中の一次資料などをご紹介します。参加ご希望の方は11:50に大学正門前にご集合ください。

  • 第I部 修士論文発表 13:00-
    1.鷹阪 龍哉(京都市立芸術大学大学院)
     真宗高田派声明における博士と口伝──天台系声明の実唱について

     本発表は、真宗高田派に伝わる「天台系声明」における「博士(楽譜)」と「口伝」と言う二種類の伝承方法の間にある齟齬(差異)について考察するものである。
     この差異の諸相を明らかにする為、現在使用する「天台系声明」を数曲例にとり、博士の伝承を訳譜「回旋譜」に書き起こし確認した。その博士の伝承を、口伝による筆者の「実唱録音音源」と比較し差異部分を特定した。次に、他の声明家の録音音源と比較分析し、差異部分に各声明家に共通するものがある事を証明する。
     それぞれの差異について、伝承時に、原因や意味が意識されているか否か、また説明が有るか否かの二つの観点から分類をした。この内、意識されず説明もされない差異については博士や口伝の表層には見えない無意識の伝承であり、声明の本質的な音楽的特色を身体的記憶として伝えるものではないかとの結論に至った。その結果を踏まえ、今日の同派での実唱についての提案を行う。

    2.尾﨑 一成(京都市立芸術大学院)
     沖縄民謡に基づく林光作品の研究──島こども歌を中心に

     林光(1931-2012)は日本を代表する作曲家の一人であり、主にオペラや合唱作品で知られている。しかし1980年代に入ってからの彼の作品で顕著なのは、器楽・合唱作品における沖縄民謡の導入である。本論の目的は、1978年以降に作られたこれらの沖縄民謡旋律を用いた林作品について、代表作を取り上げて分析し、その音楽語法を分析することである。
     これらの作品の多くは主に、作曲家杉本信夫の民謡集『沖縄の民謡』を参考とした民謡旋律を編曲したものであるが、代表的な曲を取り上げて楽曲分析を行うと、これらの林の作曲法は、沖縄音階だけではなく、日本本土の民謡音階やメシアンの移調の限られた旋法を混合して用い、そこに対位法的技法が重なることによって独創的な音楽を生み出していることがわかる。これによって、作品が単なる民謡の編曲に留まらない林独自の表現となっていることが明らかになった。

    3.片岡 リサ(大阪大学大学院)
     箏/琴をめぐる伝統音楽社会の日韓比較

     発表者は箏奏者として演奏活動を行いながら、日本の箏と韓国の伽倻琴を中心に日韓の伝統音楽の周辺を比較した修士論文を平成26年度に大阪大学に提出した。韓国では自国の伝統音楽全般を広く「国楽」と呼び、日本に比べ国や地方自治体からの多くの支援を受けながら、数々の国楽公演が催され、国楽奏者が活動している。修士論文では楽器や記譜法・奏法の比較をはじめ、教育や国家における伝統音楽の保存・伝承の日韓比較を行いながら、第3章では国楽奏者へのヒアリングやアンケート調査を通して奏者の音楽環境などをまとめ、発表者自身が置かれている日本の箏曲界の状況と照らし合わせて論じた。
     本発表では、修士論文の概要について簡単に触れ、この第3章を中心に、日本と韓国の伝統音楽奏者の環境の違いが、日韓での若手奏者のキャリアや公演制作の内容の相違にもつながりがあることを示したい。

  • 第II部 小泉文夫賞受賞記念講演

    1.陳 応時(上海音楽学院音楽学系教授)
     「私を敦煌琵琶譜研究に導かれた林謙三先生への感謝(通訳 劉 麟玉)」

    受賞理由:中国の楽律学の研究、ならびに琵琶古譜とりわけ敦煌琵琶譜の解読研究の功績に対して

    ※陳応時教授の今回の受賞についてのインタビュー記事と近影が中国の新聞に掲載されています(中文)

    2.浜松市楽器博物館 嶋 和彦(館長)
     「浜松市楽器博物館が試みてきたこと」

    受賞理由:楽器博物館として、民族音楽学の研究・教育・普及に大きく貢献したことに対して



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■MSJ-K ML(日本音楽学会西日本支部のメーリングリスト)

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  • MLとは、1通のメールをMLサーバ(MLを管理するコンピュータ)に宛てて出せば、MLの登録者全員に同じものが配信されるというものです。時間と空間を超えて議論を積み重ねることができます。
  • ML運営にあたってはモデレーターを1人置きます。モデレーターは事務手続きや議論を補助するのが役目です。


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