日本音楽学会(The Musicological Society of Japan)
西日本支部のウェブサイト 2013-2014年度
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■日本音楽学会西日本支部 第24回(通算375回)例会

日  時 : 2015年3月14日(土)14:00-17:00
会  場 : エリザベト音楽大学 506教室
アクセス : JR広島駅南口より徒歩12分。路面電車またはバスで銀山[かなやま]町停留所下車徒歩4分
地  図 : http://www.eum.ac.jp/cms/site_ja.nsf/page/Access.html
例会担当 : 藤田 隆則(京都市立芸術大学)
司  会 : 馬場 有里子(エリザベト音楽大学)
内  容 : 研究発表、シンポジウム
  • 〈研究発表〉
    佐々木 悠(エリザベト音楽大学)
     第2次世界大戦前後のドイツにおける教会音楽教育──福音主義教会とカトリック教会の比較

     20世紀以降のヨーロッパにおいて、ドイツほど教会音楽家の地位とその教育環境が体系的に整備されてきたところはない。それは教会離れが進む今もなお様々な努力のもとに維持され、教会音楽の伝統が絶えない一つの要因になっている。
     現在のように教会音楽家が生計を立てていくことができるようになったのは20世紀中頃以降であるが、その歴史は19世紀初頭にまで遡ることができる。しかし残念ながら、それを体系的に整理した例は現在に至るまで見当たらない。そこで発表者は一昨年から、ドイツにおける教会音楽教育について、様々な観点から考察を試みている。
     これまでの研究で明らかになったのは、教科書 (Handbuch, Leitfaden, Lehrbuch など)が20世紀初頭から出版されていたこと、ナチス政権樹立以降に教育内容が見直され、それが戦後の教育にも大きく影響していたことなどである。
     今回の発表では、これまでの研究を踏まえ、現在の教育や職業制度が整備され始めた第2次世界大戦前後の教育について取り上げる。具体的には、福音主義教会系の雑誌 『音楽と教会 Musik und Kirche』 とカトリック教会系の雑誌 『ムジカ・サクラ Misica Sacra』 に描かれている両教会の教育の姿を比較し、その共通点と相違点を探る。

  • 〈シンポジウム〉
    戦後 70 年特別企画:「ヒロシマ」を語る音楽の 70 年を振り返る

     今年8月、広島では被爆から70年という節目を迎える。世界で初めて核兵器が使用された都市、広島は、「反核」や「平和」を象徴する都市として語られる場合、カタカナの「ヒロシマ」と表記されることが現在では一般的となった。このように象徴的意味を担った「ヒロシマ」については、美術、映画、演劇などさまざまな芸術分野で表象の対象となってきた。音楽についても例外ではなく、戦後50年の間だけをみても、500曲以上の作品が生み出されていることが明らかとなっている(能登原調べによる)。それから20年を経た現在までには、さらに多くの作品が生み出されていることだろう。このように、一つの都市が短期間でこれほど多くの音楽によって表象されることはほとんど例を見ないが、その事実や詳細についてはまだあまり知られていない。よって、改めて「ヒロシマ」の音楽表象とその意義を問うために、70年という節目は時宜にかなっているのではないだろうか。
     シンポジウムでは、「ヒロシマ」に関わる音楽について、戦後70年の間に生み出された作品や演奏、また普及活動などさまざまな観点で研究をおこなってきた専門家に事例を発表してもらう。はじめに、「ヒロシマ」に関わる音楽(活動)についての全体像と戦後70年の流れを概観した上で(能登原)、歌謡曲(上村)、グループサウンズ(光平)、クラシック声楽曲(乗松)に焦点を当て、それぞれ注目すべき事例を紹介してもらう。これらの事例を通じて、戦後70年の間にみられる「ヒロシマ」の音楽表象とその意義、今後の可能性について、フロアを交えながら検討していきたい。

    コーディネーター:能登原 由美(「ヒロシマと音楽」委員会)
    パネリスト:上村 和博(非会員、ひろしま歌謡文化支援ネットワーク代表)
          光平 有希(総合研究大学院大学)
          乗松 恵美(京都市立芸術大学大学院)


■日本音楽学会西日本支部 第23回(通算374回)例会

日  時 : 2014年12月13日(土)13:30-17:00
会  場 : 京都市立芸術大学 新研究棟7階 合同研究室1
アクセス : (1)阪急京都線 桂駅 東口から京阪京都交通バス(亀岡・長峰方面行き)で約20分、「芸大前」下車すぐ。
       (2)阪急京都線 桂駅 西口から京都市バス(西1・西5番系統)で約15分、「新林池公園」下車、徒歩約10分。
       (3)JR桂川駅から、ヤサカバス(1号系統)で約20分、「新林池公園」下車、徒歩約10分。
       (4)JR京都駅から、京阪京都交通バス(亀岡方面行き)で約40分、「芸大前」下車すぐ。

地  図 : http://www.kcua.ac.jp/access/
例会担当 : 龍村 あや子(京都市立芸術大学)
内  容 : 研究発表、講演
  • 〈研究発表〉
    1.福島 睦美(エリザベト音楽大学)
     E・グラナドスのバルセロナにおけるピアニストとしての活動

     エンリケ・グラナドス(1867-1916)は、アルベニス、ファリャ、トゥリーナと共に、「スペイン国民楽派」の作曲家のひとりとして認識されている。しかしながら、彼は作曲家である以前にピアニストであり、活動拠点であったバルセロナの音楽界に、多くの足跡を残している。本発表では、グラナドスの音楽人生の大部分を占めるピアニストとしての活動を、バルセロナでの演奏会を分析しながら考察していく。

    2.大岩 みどり(オルガニスト)
     G.ディルータ『トランシルヴァニア人との対話』(第1部 1593;第2部 1609)にみる即興演奏の方法論

     1600年頃まで、鍵盤楽器は即興で演奏されるのが一般的であったことは、従来より指摘されているが、具体的にどのような即興演奏が行われていたかについては、十分に明らかにされていない。本発表では、ジローラモ・ディルータによる鍵盤楽器の指導書『トランシルヴァニア人との対話』に基づいて当時の演奏法を具体的に紹介するとともに、演奏と楽譜の関係について考察する。

    3.三島 郁(京都市立芸術大学)
     歴史的奏法の現在──バロック音楽におけるモダン奏法との相互の横断

     現在の「古楽」演奏は、オーセンティシティを標語としなくなり、歴史的奏法や歴史的楽器を売り文句にすることもまれになってきている。これは「古楽」の「モダン」化なのだろうか。しかし実際は、モダン演奏に対する「特権的な立場」は保ちつつ、むしろメインストリームであるモダン奏者の行う奏法に影響を与えているようにもみえる。本発表では、このような現在の、「HIP(Historically Informed Performance)」を標榜する奏者とモダン奏者の演奏を比較・分析し、現在のHIPの実情を考察する。

  • 〈講 演〉
    ルチアーナ・ガリアーノ(Luciana Galliano、国際日本文化研究センター 外国人研究員)
    「イエズス会における音楽の実践(Jesuit’ Practice of Music)」
    ※使用言語は英語と日本語です。

     It is well known how Jesuits used music with great success in order to expand the appeal of the Christian Catholic faith among non-European people, in Asia as well as in South America. What is less acknowledged is the extent in which the practice of music was widespread by Jesuits in Europe too, so that it can be argued that the flowering of latin Baroque music had been greatly supported by the activity of the Jesuit Company. The Company was founded in 1534 and received the imprimatur by the papacy in 1540, also as a response to Protestantism - a problem addressed by the Council of Trent (1545-1563). It was perhaps thanks to the Company role in reforming Catholicism that it was somehow accepted that music, another topic discussed by the Council, had such a role in the Jesuit’ worship, thanks to a different policy (if not practice) of music from the one condemned by the Council itself.


■日本音楽学会西日本支部 第22回(通算373回)例会

日  時 : 2014年9月20日(土)14:00-17:00
会  場 : 四天王寺大学 あべのハルカスサテライトキャンパス セミナー室
アクセス : 大阪市営地下鉄御堂筋線天王寺駅下車。地下1階の西改札付近にある「ハルカスシャトル(エレベーター)」のりばから17階へのぼり、さらにそこで低層用エレベーターに乗り換えて23階で降りてすぐ南側。
地  図 : http://www.shitennoji.ac.jp/ibu/abenoharukas/news/post_6.html
例会担当 : 今田 健太郎(四天王寺大学)
内  容 : 修士論文発表と書評シンポジウム

  • 〈修士論文発表〉
    杉山 恵梨(大阪音楽大学大学院修了)
     H. I. F. von ビーバー(1644-1704)の「ロザリオのソナタ集」における多面性──様式論と宗教的秘義をめぐって

     発表者が2013年度に執筆した修士論文について、様式論に留意した分析及び作品に込められた「秘義」に着目して発表を行う。本論文で課題としたのは「ロザリオのソナタ集」がもつ様式、そして宗教的な側面と世俗的な側面の相反する2つの性格に着目することにより、彼のヴァイオリン作品にみられる独自性や本作品に潜んでいる様相を炙り出すことである。
     そこで、まず着目したのが「ロザリオのソナタ集」と17世紀の様式概念との関連性である。ビーバーと同時代の A. キルヒャーが著した『普遍音楽』で言及している様式概念に着目し、各種のフィグーラを参照しながら分析を行うことにより、本作品にはstylus phantasticusとstylus hyporchematicusの2つの世俗的な様式概念が反映されていることがわかる。次に、本作品に付された聖画像が示すイメージと音楽との関係、そしてその秘義について考察する。ビーバーが生きたザルツブルクは宗教祝祭都市でありカトリックのロザリオ信仰が強く、彼が教会作品を量産していたことからも、ビーバーは明らかに宗教音楽家としての側面を持つ。しかし同時に、本作品には宗教的な信仰心だけでは語りつくすことのできない世俗的な要素も散りばめられており、この要素には福音書に記述されているロザリオの15の玄義と同じレベルの重要性が存在する。つまり「ロザリオのソナタ集」は聖と俗の相反する二つの性格が混交されて形作られていたといえる。
     以上の考察から、17世紀の様式概念、ザルツブルクにおけるカトリックの信仰心、そして宗教を超えて存在する普遍的なメッセージを、ビーバー独自の秘義として「ロザリオのソナタ集」に包含させたと考えられることを強調したい。

  • 〈書評シンポジウム〉
    高岡智子(著)『亡命ユダヤ人の映画音楽』(ナカニシヤ出版、2014)

     映像と音楽にかかわる研究がさかんに上梓されつつある昨今、高岡智子氏の本著作は、主に音楽史の蓄積と方法を用いて、映像と音楽の現在に切り込んだ著作である。音楽学と映像学の評者を迎えて質疑応答をおこなうが、タイトルにおさまりきらない問題を網羅した野心作であるので、フロアから質問をとりあげて多方面からの議論を展開したい。ぜひご一読のうえ参加されたい。

    評 者:尾鼻 崇(西日本支部、中部大学助教)
        松谷 容作(非会員、神戸大学大学院人文学研究科研究員)
    応 答:高岡 智子(静岡大学専任講師)
    司 会:今田 健太郎(西日本支部、四天王寺大学専任講師)


■日本音楽学会西日本支部 第21回(通算372回)例会

日  時 : 2014年7月12日(土)14:00-17:00
会  場 : 九州大学 大橋キャンパス 3号館322教室
アクセス : 西鉄天神大牟田線 大橋駅下車。詳細は下記ホームページをご参照ください。
地  図 : http://www.kyushu-u.ac.jp/access/index.php
例会担当 : 矢向 正人(九州大学)
内  容 : 研究発表

  • 〈研究発表〉
    1.西田 紘子(九州大学)
     ハインリヒ・シェンカーのリズム論再考──〈構造的リズム〉と〈演奏解釈的リズム〉

    2.竹下 秋雄(九州大学)
     音楽情報処理手法を用いた雅楽の明治撰定譜のパターン分析──MGDP手法を用いた篳篥の旋律パターン分析

    3.高野 茂(佐賀大学)
     器楽音楽における声楽的要素──器楽レチタティーヴォをめぐって

    4.中村 美亜(九州大学)
     東日本大震災と音楽──アートマネジメント研究と音楽学をつなぐ試み



■日本音楽学会西日本支部 第20回(通算371回)例会

日  時 : 2014年6月28日(土)13:30-17:00
会  場 : 同志社女子大学今出川キャンパス ジェームズ館201教室
アクセス : 京阪電車出町柳駅/京都市営地下鉄烏丸線今出川駅下車。詳細は下記ホームページをご参照ください。
       駐車場スペースがございませんので、公共交通機関をご利用ください。
       また、同志社女子大学正門横の守衛室で受付を済ませてからジェームズ館へお越しください。
地  図 : http://www.dwc.doshisha.ac.jp/access/imadegawa/index.html
例会担当 : 仲 万美子(同志社女子大学)
内  容 : 修士論文発表、研究発表

  • 〈修士論文発表〉
    肥山 紗智子(京都市立芸術大学大学院)
     「不在」のライトモティーフ──アルフレッド・ヒッチコック『レベッカ』(1940)の音楽表現

     本発表は、サスペンスの巨匠として知られるアルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock(1899−1980)の映画『レベッカ』(1940)の音楽、主にライトモティーフの運用に注目し、ヒッチコック映画における音楽表現について考察するものである。『レベッカ』が撮られた当時、ハリウッド映画は後期ロマン派の音楽手法を大いに取り入れたシンフォニック・スコア全盛の時代で、ライトモティーフの運用をめぐっては、今日まで多くの議論がなされている。『レベッカ』の音楽表現の特徴を捉えることで、同時代のハリウッド映画のライトモティーフについても再検討したい。

  • 〈研究発表〉
    1.潟山 健一(同志社女子大学)
     クリスマス・ママーズのポリティクス

     イエス・キリストの生誕を祝すクリスマスは、キリスト教圏における暦の上での節目でもあり、後者の意味合いに重きを置いた世俗の催しも少なくない。一年を締め括り、新たな年を迎えるためには先立つものも必要であるけれど、物乞いをするわけにも行かず、という庶民の知恵が生み育んだ伝統には、やはり奏でることと演じることが不可欠の要素であった。本発表では、イングランド南東部イースト・サセックス州の例を引きながら、その特色と意味について検討する。

    2.小西 潤子(沖縄県立芸術大学)
     パラオの現代歌謡とその広がり──《キリギリス》が《バドワイザー》になった?!

     パラオ共和国の現代歌謡デレベエシール derebechesiil の多くは、日本語の歌詞、日本の流行歌の替え歌やメロディの部分的借用、またはその派生からなり、その一部は若い世代にも継承されている。パラオは、両大戦間(1914-1945)に日本の統治支配を受けた南洋群島内でも先進地であり、1970年代まで日本の流行歌が積極的に移入された。本発表では、デレベエシール50曲の分析をもとに、それらの概要とヤップ島などへの普及について紹介する。



■日本音楽学会西日本支部 第19回(通算370回)例会

日  時 : 2014年5月17日(土)14:00-17:30
会  場 : 大阪音楽大学 第1キャンパスA号館 A-301教室(豊中市庄内幸町1-1-8)
アクセス : 阪急宝塚線「庄内駅」下車、徒歩8分。詳細は下記のリンクをご参照ください。
地  図 : http://www.daion.ac.jp/about/a5a6tu0000000mph.html
例会担当 : 井口 淳子(大阪音楽大学)
内  容 : 修士論文発表、博士論文発表、小泉文夫賞受賞記念講演

  • 〈修士論文発表〉
    京谷 政樹(大阪音楽大学大学院)
     サーストン・ダートの楽譜校訂とイギリスにおける歴史的位置付け

  • 〈博士論文発表〉
    重川 真紀(大阪大学大学院)
     オペラ《ルッジェロ王》の成立史──資料研究と文脈研究の視座から

  • 〈小泉文夫賞受賞記念講演〉
    1.ロベルト・ガルフィアス(Robert Garfias、カリフォルニア大学アーヴァイン校教授)
     「時代の流れの中で音楽伝統を伝えること」

    受賞理由:雅楽を出発点に音楽文化のグローバルな地域研究の先駆者として、長年にわたる民族音楽学に果たした功績に対して


    2.オペラシアターこんにゃく座(こんにゃく座代表 萩京子氏)
     「日本オペラの夢」

    受賞理由:母語によるオペラ創作の可能性を追求し、その成果を卓越した実践を通して持続的に提示してきた功績に対して



■日本音楽学会西日本支部 第18回(通算369回)例会

日  時 : 2014年3月15日(土)13:30-16:30
会  場 : 広島大学 東広島キャンパス 総合科学部 J306教室(〒739-8521 東広島市鏡山1-7-1)
アクセス : 電車の場合
        JR山陽本線「西条」駅下車、駅前ロータリーから「広島大学」行きバスで「広大西口」下車
       (広島市内から)高速バスの場合
        JR「広島駅」または「広島バスセンター」から高速バス「グリーンフェニックス」で「広大西口」下車

地  図 : 広島大学 東広島キャンパス アクセス案内ページ
       キャンパスマップ ※会場教室のある「J棟」の場所は、バス停「広大西口」周辺マップを参照
例会担当 : 馬場 有里子(エリザベト音楽大学)、藤田 隆則(京都市立芸術大学)
内  容 : 研究発表、報告発表、話題提供

  • 〈研究発表〉
    1.西田 諭子(お茶の水女子大学大学院)
     ショパンの《スケルツォ》作品39における調性構造の二極性

     19世紀の音楽における調性の両義性・二極性については既に多くの研究がなされており、ショパンの作品に見られる調性の曖昧さ・両義性についてもこれまで様々に論じられてきているが、楽曲全体の調性構造における二極性となると、限られた作品についてしか論じられていないのが現状である。しかし実際には、これまでの研究での指摘では、調性構造に二極性をもたらす構造的要因のすべてが尽くされておらず、そのため、二極的な調性構造を有していると思われる作品が、単一の主調によって説明されている例も少なくないのである。
     本発表では《スケルツォ》作品39を例に、これまで調性構造の二極化を生じさせる要素としてはあまり取り上げられてこなかった特定の音高の強調に特に着目して分析することによって、ショパンの作品における調的二極性の新たな形を提示することを目指す。また、この作品の調性構造は従来もっぱらソナタ形式との関連から論じられており、要所で暗示あるいは明示されるホ調については、再現部で第一主題との対比を形成するために用いられる調としてしか扱われてこなかったが、本発表では、この作品の調性構造においてはホ調が、主調である嬰ハ調に比肩する重要な位置を占めていることを明らかにしたいと考えている。

  • 〈報告発表〉
    2.能登 原由美(広島文化学園大学)
     冷戦期における音楽と政治──アールトネンの《交響曲第2番「ヒロシマ」》の上演に関する調査をもとに

     「ヒロシマ」は、これまで世界中の作曲家により様々な音楽作品の題材として取り上げられて来た。その数は、1945年の原爆投下直後から1995年の半世紀の間に創作されたものだけでも580曲近くにのぼる(筆者調べ)。その数多くの音楽作品のうち、器楽曲として、また外国の作曲家による作品として最初のものと位置づけられるのが、フィンランドの作曲家、エルッキ・アールトネン(1910-90)の《交響曲第2番「ヒロシマ」》である。被爆から僅か4年後の1949年に作曲された本作は、同年ヘルシンキで世界初演されるとともに、被爆から10年目にあたる1955年には、広島市において5千人の市民を前に演奏されている。
     しかし本発表で注目するのは、世界初演の翌年から1960年までの間に、プラハ、ワルシャワ、ブカレスト、クラクフ、タリンなど社会主義政権下の都市において上演されたという事実である。当時のヨーロッパは、東西の冷戦が激しくなり始めた時期であり、こうした「東欧」を中心とする本作の上演史の背景に政治的な思惑があったことは容易に考えられる。没後20年を超えて作曲家アールトネンの名前はフィンランド音楽界でも忘れられつつあるが、そうした中、筆者はアールトネンや本作に関する資料について現地調査を行うとともに、上演のあった各都市での調査を行った。本発表は、この一連の調査をもとに、冷戦期の音楽と政治について一考察を提示するものである。

  • 〈話題提供〉
    3.藤田 隆則(京都市立芸術大学)
     素人のオーセンティシティ──能楽からみる日本、アジアの音楽実践



■日本音楽学会西日本支部 第17回(通算368回)例会

日  時 : 2013年12月14日(土)13:30-17:00
会  場 : 京都市立芸術大学 新研究棟7階 合同研究室1
アクセス : (1)阪急京都線「桂駅」東口から京阪京都交通バス(亀岡・長峰方面行き)で約20分、「芸大前」下車すぐ
       (2)阪急京都線「桂駅」西口から京都市バス(西5番系統)で約15分、「新林池公園」下車、徒歩約10分
       (3)JR京都駅から、京阪京都交通バス(亀岡方面行き)で約40分、「芸大前」下車すぐ。

地  図 : http://www.kcua.ac.jp/access/
例会担当 : 龍村 あや子(京都市立芸術大学)
内  容 : 研究発表

  • 〈研究発表〉
    1.スンダリ オリビア エベリン(京都市立芸術大学院)
     アナンダ・スカルランの "Tembang Puitik テゥンバング・プイティック" について──インドネシア語の詩による歌曲を中心に

     本発表では、スペイン在住のインドネシア人のピアニスト・作曲家 Ananda Sukarlan アナンダ・スカルラン(1968年〜)の歌曲に着目し、特に Tembang Puitik テゥンバング・プイティックの作品を取りあげる。
     Tembang Puitik テゥンバング・プイティックとは、インドネシア語の詩による歌曲のことである。1970年に有名なテゥンバング・プイティックの作曲家Mochtar Embutモッホタル・エンブトゥが亡くなって以来、テゥンバング・プイティックという用語はあまり使われなくなった。しかし2006年、アナンダ・スカルランが《Kamaカマ》というインドネシア語の詩による歌曲を作曲し、テゥンバング・プイティックという用語がまた再び知られるようになった。またこの作品は、テゥンバング・プイティックの伝統を受け継いだものとなっている。アナンダの歌曲作品はインドネシアの他の作曲家とは異なり、彼の作品はあるモチーフを基に作曲され、インドネシア語によって歌われることで、とても特徴的な響きを生みだしている。
     今回は、まずアナンダ・スカルランという人物について、筆者が行った彼へのインタービューの報告と共に紹介する。次に彼の幾つかの作品を取りあげ、その音楽的特徴と彼独自の音楽観について発表したい。そして日本人の音楽学者はもちろん、より多くの人にアナンダ・スカルランの音楽を知る機会を提供したい。

    2.照屋 夏樹(京都市立芸術大学院)
     沖縄の歌にみる「世」の表現について──喜納昌吉《石笛のうた》を中心に

     今回は、喜納昌吉《石笛のうた》の歌詞に出てくる「戦世」という「世」の表現を中心に、彼のオリジナル作品だけでなく、昔から伝わる沖縄のウタ(民謡やおもろ歌謡)をアレンジした楽曲なども取り上げ、彼が社会や世の中をどのように描き、どのような想いを表現しているかについて明らかにする。さらに、現代の音楽家(アーティスト)達の「世」にまつわる歌も例に挙げ、その概念と変遷についても考察を行いたい。

    3.竹内 直(京都市立芸術大学院)
     早坂文雄の音楽語法──戦前」の民族主義から「戦後」の前衛の時代へ

     本論は日本の作曲家は早坂文雄の音楽語法を明らかにすることを目的とし、とくに「戦前」の民族主義と「戦後」の前衛の時代にかけての歴史的な連続性を中心に論じている。早坂文雄が「戦前」の民族主義から「戦後」の前衛の時代にかけて、どのような音楽語法を用い、そしてどのように自己の音楽語法を開拓したのか、それが本論の眼目である。



■日本音楽学会西日本支部 特別例会

日  時 : 2013年10月19日(土)16:00-18:00
会  場 : 大阪大学 豊中キャンパス 文法経講義棟 文13教室
アクセス : 阪急宝塚線「石橋駅」下車徒歩15分/大阪モノレール「柴原駅」下車徒歩10分。
地  図 : キャンパスまでの地図 http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/accessmap.html
     : キャンパス内の地図 http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/toyonaka/files/Part_A.pdf

  • 〈講 演〉
    ズビグニェフ・スコヴロン(Zbigniew Skowron、ワルシャワ大学史学部音楽学学科教授)
     "Tradition and Modernity in the Music of Witold Lutoslawski"
    (ヴィトルト・ルトスワフスキの音楽における伝統と現代性)
    ※「Lutoslawski」の「l」にはクレスカ(/)がついています。
    ※講演は英語です。以下は要旨の和訳となります。

     イーゴリ・ストラヴィンスキーやベーラ・バルトークと同様、20世紀音楽の古典という呼称によって形容されるヴィトルト・ルトスワフスキの作品だが、伝統とモダンの両様の要素をきわめて独特な仕方で結合したその音響語法は、同時に、初めて耳にしてただちにルトスワフスキと感知される、すぐれて個性的なフォルムと性格を有する。古典主義及びロマン主義音楽から継承され来たった広い意味での伝統とルトスワフスキとの繋がりは、一つの流れとして見ることが可能だが、その端緒は、リムスキー=コルサコフ流の後期ロマン派的伝統の継承者だったヴィトルト・マリシェフスキに師事したワルシャワ音楽院時代の作曲教育の中にあった。やがて20世紀30年代の終わり、作曲家として出発したルトスワフスキは、音楽伝統との相互対話を基本姿勢の一つとする新古典主義の潮流に身を置く。1956年以後、ポーランドにも芸術家にとっては良好な政治・文化状況が到来し、芸術における社会主義リアリズム・ドクトリンの支配は決定的に終焉するが、その中でルトスワフスキも自らの音楽的プロジェクトを全面的に展開することが可能となった。そのプロジェクトにおいて、新たに一連の対話を開始したのが伝統と現代性である。
     私の講義では、音高と時間をどのように組織するかという問題におけるルトスワフスキの基本的かつ現代的な態度について、また音の「アクション」、二分割形式、チェイン(鎖)技法といった彼の方法について集中的にお話しする。ルトスワフスキの十二音和声法、制御された偶然性、様々な形式的ソリューションなどの記述にあたっては、具体的な作品を例に引きながら、(1)音楽作品の伝統的要素に対するルトスワフスキの創造的アプローチ、(2)前衛音楽から得たヒントの合理的な制御による処理、(3)音楽を知覚するプロセスにおける独特な音楽的ドラマツルギーの意味合い──といったポイントを提示したい。

    進 行:伊東 信宏(大阪大学)



■日本音楽学会西日本支部 第16回(通算367回)例会

日  時 : 2013年9月7日(土)14:00-17:00
会  場 : 大阪音楽大学 第1キャンパス A号館 A-305教室
アクセス : 阪急宝塚線「庄内駅」下車、徒歩8分。詳細は下記ホームページをご参照ください。
地  図 : http://www.daion.ac.jp/about/a5a6tu0000000mph.html
例会担当 : 今田 健太郎(四天王寺大学)
内  容 : 研究発表とパネル・ディスカッション

  • 〈研究発表〉
    筒井 はる香(同志社女子大学)
     1830〜40年代ウィーンにおける鍵盤楽器の状況──フィスハルモニカを中心に

    本発表は、1821年に発明されたフィスハルモニカというリード楽器が、どのような社会的背景で発明され、音楽文化にどのような影響をもたらしたのか、という問題を考察するものである。フィスハルモニカは、1830〜40年代ウィーンの家庭音楽に欠かせない存在であったと同時に、シューマンなど多くの作曲家に影響を与えた。この楽器の普及に貢献した音楽家C. Georg Licklの活動やレパートリーの紹介を通じて、19世紀前半ウィーンにおける音楽文化の一端を探りたい。

  • 〈パネル・ディスカッション〉
    溝口作品にみる映画と「音楽」の諸問題──深井史郎と早坂文雄を例に

    トーキー映画の普及する一九三〇年代から五〇年代、映画監督である溝口健二は、その作品の音楽・音響について、同時代に映画音楽の作曲家として第一人者であった深井史郎や早坂文雄とともに、さまざまな試みをおこなった。作曲家の側といえば、それぞれに学んだ西洋音楽を踏まえつつ、映画の音楽制作の現場、たとえばマイクロフォンによる録音、オーケストレーション、光学式サウンドトラック、ミュジック・コンクレートなどの登場というトレンドに立ち会うことになる。他方、伝統的な音楽的演出である囃子を用いていることも無視できない。戦前/戦後ということ以上にめまぐるしかっただろうこの時期に、溝口映画は映画と音楽それぞれにとってどのような実験場となりえ、またどのような達成をみたのか。あるいは、武満徹らの次世代を迎える以前はどのような状況だったのか。より大きく言えば、日本という文脈のなかで、物語の音楽的演出はどのように成り立つのかについて議論したい。

    長門 洋平(非会員、国際日本文化研究センター機関研究員)
    溝口映画の音・音楽をテーマに、約1年前に総合研究大学院大学にて博士号を取得。溝口が作品をとおして達成した映画における音・音楽の理念を明らかにする。

    柴田 康太郎(非会員、東京大学大学院生)
    一九三〇年代の深井史郎の言説を中心に、西洋音楽や映画の音楽についての当時の作曲家たちの思考とその由来を明らかにする。

    竹内 直(西日本支部)
    京都市立芸術大学にて早坂文雄についての論文で博士号を取得したばかり。早坂の作曲家としての足跡をふまえて、彼が映画の音楽にどのように関わったのかを示す。

    司 会・コーディネーター:今田 健太郎(西日本支部、四天王寺大学専任講師)



■日本音楽学会西日本支部 第15回(通算366回)例会

日  時 : 2013年7月13日(土)14:00-17:00
会  場 : 九州大学 大橋キャンパス 3号館322教室
アクセス : 西鉄大橋駅下車。詳細は下記ホームページをご参照ください。
地  図 : http://www.kyushu-u.ac.jp/access/index.php
例会担当 : 矢向 正人(九州大学)
内  容 : 研究発表

  • 〈研究発表〉
    1.小畑 郁男(長崎純心大学)
     旋律表現法──モーツァルトKV333による例示

    2.柴田 真希(東京芸術大学大学院)
     黒川能の《羅生門》にみる謡の特徴

    3.崔 秀蓮、矢向 正人(九州大学)
     指示表出/自己表出からみた日韓の語り物の比較

    4.中村 滋延(九州大学)
     前衛作曲家としての今史朗──音列から音叢へ



■日本音楽学会西日本支部 第14回(通算365回)例会

日  時 : 2013年6月29日(土)13:30-17:30
会  場 : 同志社女子大学 京田辺キャンパス 頌啓館K123教室
アクセス : JR学研都市線同志社前駅/近鉄京都線興戸駅下車。詳細は下記ホームページをご参照ください。
地  図 : http://www.dwc.doshisha.ac.jp/access/kyotanabe/campusmap.html
例会担当 : 仲 万美子(同志社女子大学)
内  容 : 修士論文・博士論文発表、研究発表、特別講演

  • 〈修士論文発表〉
    舩木 理悠(同志社大学大学院)
     ジゼル・ブルレのリズム論──音楽的リズムの成立をめぐって

  • 〈博士論文発表〉
    山口 眞季子(大阪大学大学院)
     1920年代ベルリン・サークルによるシューベルト・ルネッサンス

  • 〈研究発表〉
    加藤 幸一
     線的思考の限界と脱却の考察──ロマン派ツィクルスとシューベルトの作品90をめぐって

  • 〈特別講演〉
    Trever Thomas Hagen(Exeter 大学大学院博士課程修了、神戸大学招聘外国人研究者)
     "Musicking, Resistance and Immunity: the Aesthetic Ecology of the Czech Underground 1968-1989"
     (ミュージッキング、抵抗と免疫──チェコのアングラ集団における美の生態学 1968-1989)



■日本音楽学会西日本支部 第13回(通算364回)例会

※東洋音楽学会西日本支部第260回定例研究会との合同
日  時 : 2013年5月25日(土)14:30-17:00
会  場 : 大阪音楽大学 第1キャンパスA号館 A-301教室(豊中市庄内幸町1-1-8)
アクセス : 阪急宝塚線「庄内駅」下車、徒歩8分。詳細は下記ホームページをご参照ください。
地  図 : http://www.daion.ac.jp/about/a5a6tu0000000mph.html
例会担当 : 井口 淳子(大阪音楽大学)
内  容 : 修士論文・博士論文発表

  • 〈修士論文発表〉
    1.山村 磨喜子(大阪音楽大学大学院)
     日本のフラメンコ受容──明治期から昭和初期における先駆者たちの活動

  • 〈博士論文発表〉
    2.園田 順子(京都市立芸術大学大学院)
     J.ローゼンミュラーの声楽作品研究──その個人様式と越境性
    3.高野 裕子(京都市立芸術大学大学院)
     18世紀フランスにおけるクラヴサン音楽の新局面──「耳と目で分かち合う喜び」をもたらした「手」の機能



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