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【補遺】謡伝書の具体的理解と体系的把握に向けて ―「永正元年観世道見在判伝書」の翻刻データ公開 ― 補遺 観世宗節筆「(音曲)十五之次第」翻刻

高橋 葉子 編


 

補遺 観世宗節筆「(音曲)十五之次第」翻刻

資料紹介と翻刻対照表について

観世文庫蔵の二つの謡伝書、「音曲十五之次第」(資料番号1/6/2)と「十五之次第」(同1/1/5)は、「永正元年観世道見在判伝書」に収載される「音曲十五之大事」を編集した伝書と思われる。二書ともに道見の嗣子第七代観世大夫宗節(元忠。永正六(1509)―天正十一(1583))の自筆本だが、文面に僅かな異同があり、その様子から「音曲十五之次第」が「十五之次第」に先行すると考えられる。室町末期の謡伝書再編の過程を具体的に示す資料であることから、全文を翻刻掲載した。

「音曲十五之次第」は謡本の紙背を利用した単独の仮綴冊子本である。「十五之次第」は、宗節の奥書と花押を備えた巻子本(「〔観世元忠〕筆巻子本音曲伝書」)に、世阿弥の「音曲口伝」や、「永正元年観世道見在判伝書」の第二条「音曲内六次第」に類似する口内説などと共に収録されている。巻子本全体の異本には、鴻山文庫蔵『節章句秘伝之抄』、同「天文六年真木景忠奥書音曲伝書」等がある。以下、「音曲十五之次第」「十五之次第」の二書を合わせて「次第」と略称する。

道見在判伝書の「音曲十五之大事」(以下「大事」)と宗節筆「次第」の内容上の主要な違いは、前者の金春系伝書としての特徴的記述が後者では除かれていることである。これにより金春系の「大事」が観世家の伝書として再編されたことがわかる。ほかに文章表現や分量、「次第」には例曲が一曲もない点など、外見的にも大きく異なっている。詳しくは、拙稿「「音曲十五之大事」と「十五之次第」―室町末期音曲伝書再編の一断面」(『能と狂言』22号)をご参照いただければ幸いである。なお本研究は、科研費研究(基盤C24K03561)「謡伝書の体系的研究」の成果の一つである。

 

この補遺では、「大事」と「次第」の本文比較のため、両者の翻刻を対照表の形で掲載した。表の上段に「音曲十五之大事」の条文を載せ、下段の右側にこれに対応する「音曲十五之次第」、左側に「十五之次第」の条文を配置した。従って「次第」の十五ヶ条の順番は原本通りではない。相互に対応しない一ヶ条については「(ナシ)」とした。「大事」の本文には、本ページの般若窟文庫『五音 観世道見書物』の翻刻データから該当部分を抜き出し再掲した。但し例曲については、本文中に記述されるもの以外は曲名のみを記し、詞章を省略した。本文中に記述される例曲については節付け記号を省略した。

※『節章句秘伝之抄』(鴻三七17)は、細川妙庵玄又(幸隆)の周辺で編まれた細川十部伝書の一。14の部分からなる種々の音曲伝書の合写本で、その8番目(H)に「謡根本秘伝抄」と題して収録される伝書が「〔観世元忠〕筆巻子本音曲伝書」に一致する。「天文六年奥書真木景忠奥書音曲伝書」(鴻三七5)も9部分からなる合写本で、その最初に収録される伝書が「〔観世元忠〕筆巻子本音曲伝書」に一致する。

 

貴重な資料の翻刻を許可いただいた観世文庫に深謝申し上げます。

翻刻凡例

  1. 文字表記は「永正元年観世道見在判伝書」の翻刻凡例1~4に準じた。振り仮名は省略した。
  2. 難読文字は☐、虫損は■、墨滅文字は◆とした。
  3. 原本の補筆を〔 〕で括り、欠字や訂正に対する補筆は該当の箇所に挿入し、注記的な補筆については注記の対象と思われる文字を太字にし、その下に挿入した。
  4. 「大事」の[ ]は東北大学本、【 】は『謡曲拾穂鈔』に基づく翻刻者による補筆。太字は3に同じ。
  5. 「十五之次第」の[ ]は『節章句秘伝之抄』、【 】は「天文六年真木景忠奥書音曲伝書」に基づく翻刻者による補筆である。太字は3に同じ。
  6. 「大事」原本の例曲は曲名のみを《 》で示した。原本の一つ書きの「一」は省略した。
  7. その他翻刻者による注記を( )で示した。

 

 

公開:2024年08月29日 最終更新:2024年09月05日

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