図書室よりお知らせ
2026.03.09
「プチ展示」第6回 オープンリール テープデッキ ―昭和のアナログ機器の風格―

日本伝統音楽研究センター(伝音)では、様々な音源を録音したオープンリールのテープを多数所蔵しています。それらの整理・保存・目録データ化、そして音源のデジタル化は、たいへん手間のかかる作業ですが、大きなテープデッキを動かして、少しづつ進めており、一部の資料を公開しています。
オープンリールテープの資料としての特徴は、市販レコード等のダビング録音を除けば、そのほとんどが市販されていない、公開されていない、業務用・研究用の収録物、いわゆる一点ものであることです。一方、レコード盤・CD盤は、一部の私家盤・テスト盤・見本盤を除いて、そのほとんどが大量生産され市販流通にのった商業製品です。
伝音センターでは、2006年度から2007年度にかけて亀村正章氏に伝音所蔵オープンリールテープの一部の調査を委託し、名古屋で伝承された平家琵琶演奏の記録に力を注いだ藤井制心氏から寄贈された録音の調査研究とデジタル化を進めました。その成果の一部は、2007年度第1回公開講座「今よみがえる平家(平曲)―物語る声と音―」において公開し、数十年前の希少な音の披露に好評をいただきました(詳細は、伝音センターwebサイトの報告記事をご覧ください)。
また、2020年度前期には小西志保氏に「常磐津家元所蔵オープンリール音源のデジタル化」を委託し、全125本のうち65本のテープをデジタル化しました。収録内容は、昭和30~40年代の放送録音(局のマスターテープダビングとみられるもの、出演者本人の所有)、演奏会収録(業者による録音、出演者本人の所有)で、市販レコードが少ない常磐津節の研究資料、伝承資料として、たいへん貴重なものです。近い将来には目録を整えて一部資料の公開を果たしたいと考えています。
このように、伝音センターに収蔵されるオープンリールテープの収録内容は、オリジナル性、希少性が高いものが多いのですが、収録日時・場所・演奏者・曲名等の収録内容に関するメモ書きが付属するもの/しないものがあり、断片的な情報しか記されないものも多く、研究資料として活用・公開するためには、あらかじめ収録内容全般の学術的考証が必要です。さらには、経年劣化による再生の不具合/不能などの技術的・物理的課題があり、また公開活用に際しては、収録内容の著作権、権利関係の調査と確認、関係者への許諾申請等も必要です。そのため、未整理、未公開のテープが多数眠っていますが、ともかく、経年劣化に対処するため、まずはオープンリールテープデッキを動かして、テープ内容のデジタル化を進めておくことが肝要です。
ところで、平成初期まで大活躍した手のひらサイズの「カセットテープ」は、FM放送をエアチェックしたり、友達から借りたレコードをテープデッキでダビングしたりして、ウォークマンで聞いて楽しんだ昭和・平成世代にお馴染みです。その原型が「オープンリールテープ」であるといえます。サイズこそ違うものの、原理的・技術的には同一のもので、磁気テープを機器のヘッドにこすらせて再生・録音する仕組みです。
カセットテープが普及する前、1970年代までは、オープンリールは家庭でも普及していました。1970年代以降はもっぱら、放送局、レコード会社、スタジオなど業務用途に限られるようになりましたが、デジタルに完全移行する近年まで業務の現場で活用されてきました。
最近はレコードプレイヤーが市民権を復活させていますが、オープンリールにはLPレコードのような優れた市販ソフトが存在しないため、今後もマイナーな存在であり続けると思われます。しかし、埋没している希少音源の再生のためには欠かせない音響機器です。1970年代以降もプロ用に製作された巨大な機器が遺存し、ずっしりとした風格をたたえています。
このような経緯をふまえ、伝音センターの数々の研究活動において、いまだ活躍中の機器たちを、このたび展示品として初めて紹介いたします。
古いだけに故障や不具合がしばしば発生し、手間がかかる機器たちですが、アナログな構造なので、テープを回すピンチローラーのゴムや内部のゴムバンドの経年劣化などは、素人修理でも復活できる場合があります。
それより深刻な問題は、テープ本体の経年劣化(酸っぱい匂いが拡散する)です。再生中にテープが細切れに切断したり、貼り付き・巻き付き等が生じたりして、再生できないテープが年々増えているのです。
伝音センターでは、これらの機器の修理、テープ再生・デジタル化に協力してくださるかたを随時募集しています。
公開期間:2025年9月~2026年3月(伝音図書室の開室日)
京都市立芸術大学
日本伝統音楽研究センター図書室
日本伝統音楽研究センター資料委員会