平成15年度第3回公開講座は、「日本の伝統的な音楽と身体動作から読みとられるもの ―カミとホトケをめぐって―」と題して、平成16年2月7日(土)の午後2時30分から、キャンパスプラザ京都5階第1講義室で開催しました。約80名の参加者がありました。
内容は、吉川周平(きっかわ しゅうへい)日本伝統音楽研究センター教授による、講演「日本の伝統的な音楽と身体動作から読みとられるもの ―カミとホトケをめぐって―」でした。
日本の伝統音楽には、芸術音楽ばかりではなく、多種多様で魅力的な民俗音楽がある。わが国の民族音楽学の第一人者だった小泉文夫(1927〜83)は、日本の伝統音楽を理解するためには、芸術音楽の基盤をなす民謡と、さらにその基盤をなすわらべ歌の研究が不可欠であることを実証した。民謡も民俗音楽のひとつだが、日本の民俗音楽の多くは、各地で行なわれる祭りで演じられている民俗芸能の重要な要素として、伝承されている。小泉文夫は、それまでの日本の伝統音楽の研究が、歌詞などの音楽外の要素の研究に重きを置いてきたのに対し、ドイツの音楽学者メルスマンなどの西洋の音楽学の方法論を役立てて、音そのものを対象とした研究を進めることに成功した。その個人的な指導を受けた私は、民俗芸能の主要な要素である身体動作に焦点を当てて、身体のウゴキそのものを対象とした研究の可能性を探ってきた。
日本の民俗芸能の中で、もっとも複雑なものは神楽であり、もっとも単純に見えるものが盆踊りである。瀬戸内海の島々には、写真に見られるように、初盆の人の位牌を背負って踊る盆踊りがある。これは初盆を迎えた死者の霊の葬送、聖なるものへの再生の儀礼と考えられる。神楽もこうした霊を視点として考える場合、その主要な目的は、自分たちの運命に関る神の出現であり、その神霊を背負って舞うことが、神出現の具体的な表現であり、神アソビと解される。日本の伝統音楽の固有の美の魅力に触れながら、神楽や盆踊りなどの宗教的な儀礼に見られる身体動作のかたちから読みとられるものを検討し、フィールドにおけるカミとホトケについて考えてみよう。
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>> 吉川周平プロフィール
廣瀬量平所長による開会の辞
西島安則学長による挨拶
講演風景1
講演風景2
会場風景
山路興造氏によるコメント