日本伝統音楽研究センター

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凡例

日本語要旨

0 はじめに

1 旧下桂村と桂地蔵前六斎念仏の概況

2 桂地蔵前六斎念仏の民俗芸能誌

3 桂地蔵前六斎念仏の特質

4 桂地蔵前六斎念仏における伝承

謝辞

文献資料

音響資料

映像資料

英語要旨

 

 

桂地蔵前六斎念仏 その特質と伝承をめぐってトップへ

2 桂地蔵前六斎念仏の民俗芸能誌

楽器の種類・奏法

使用する楽器の種類・構成・奏法は、太鼓(カッチン(堅太鼓)・中ドロ(中太鼓)・大ドロ(大太鼓)、小太鼓(締太鼓)、鼓(小鼓・大皮)、鉦(一丁づり(一丁鉦)・二丁づり(二丁鉦)、笛(6孔、六本調子の篠笛)と、京都の他の六斎念仏のものとほぼ同様のものとなっている(表2「桂地蔵前六斎念仏の楽器一覧」参照)。この他、江馬務によると、孔の大きな横笛も使用するとあるが〔江馬・井上 1953:75-76〕、今回の調査では確認することができなかった。

表2「桂地蔵前六斎念仏の楽器一覧」

楽器の名称

本体の寸法

バチの名称

バチの寸法

備考

カッチン
(堅太鼓)
直径13.5センチメートル、鼓長27.5センチメートル ブチ 長さ46.5センチメートル、直径6.5ミリメートル 竹製バチ
中ドロ
(中太鼓)
直径20.5センチメートル、鼓長26センチメートル ブチ 長さ33センチメートル、直径2センチメートル 木製バチ
大ドロ
(大太鼓)
直径29センチメートル、鼓長38センチメートル ブチ 長さ36.5センチメートル、直径2センチメートル 木製バチ
小太鼓
(締太鼓)
直径35センチメートル(内径25.5センチメートル)、鼓長17センチメートル ブチ 長さ33センチメートル、直径2センチメートル(先尖がり) 木製バチ
小鼓
直径20.2センチメートル(内径11センチメートル)、鼓長17センチメートル ブチ 長さ33センチメートル、直径2センチメートル(先尖がり) バチを使用した陰打ち
太皮
直径22センチメートル(内径12.5センチメートル)、鼓長28.3センチメートル ブチ 長さ15.3センチメートル  
一丁づり
(一丁鉦)
A)凹面直径19.9センチメートル(内径16.4センチメートル)、凸面直径17.5センチメートル、高さ4.7センチメートル、紐の長さ43センチメートル、4丁、(B)凹面直径17.3センチメートル(内径14.1センチメートル)、凸面直径15.1センチメートル、高さ4.8センチメートル、2丁、(C)凹面直径26.6センチメートル(内径17センチメートル)、凸面直径18センチメートル、高さ5.5センチメートル、4丁 鉦スリ 長さ31.3センチメートル、直径3.2センチメートル 昔は首紐を肩にかけていた。現在は枠を使用。
二丁づり
(二丁鉦)
A)凹面直径17.3センチメートル(内径14.2センチメートル)、凸面直径15.2センチメートル、高さ4.8センチメートル、枠の縦の長さ32センチメートル、横の長さ21.7センチメートル。左右同型、(B)凹面直径21.2センチメートル(内径16.5センチメートル)、凸面直径17.6センチメートル、高さ4.7センチメートル 鉦スリ 二又、先はシカの角製、直径3センチメートル  
長さ41センチメートル、端から歌口まで9.7センチメートル、1孔まで12.3センチメートル、もう一方の端から6孔まで7センチメートル、直径2センチメートル     6孔、六本調子の篠笛

このうち、京都の他所とくらべて、太鼓の類が比較的多く使用され、特定の曲目に締め太鼓や鼓の類が使用されるのは注目される(それぞれの楽器の寸法は、表2で示した)。なお、かつては死者供養のために楽器を寄贈する慣習があり、戒名と施主の名前が記載されている太鼓の類が多数現存している(中ドロ(中太鼓)の銘の例:「徳行院尊誉泰学宗慶居士 施主風間花衛門」)。奏法としては、革面うつだけではなく、縁の鋲をうつ奏法も頻繁にみられる。また、手をひねって太鼓を左右に回転させる(カッチン(堅太鼓)の場合)、手をそらせて太鼓を頭の上でまわす(中ドロの場合)などの身体動作が非常に多く、見せ場となっている。

2種類ある鉦のうち、一丁づり(一丁鉦)は、発願念仏・回向念仏と〈祇園囃子〉でのみ使用する。念仏では凸面打ちするが、〈祇園ばやし〉で使用する場合は、祇園祭りと同様、複数の鉦をつりさげて凹面打ちする。その奏法には、上打ち(口唱歌では「チ」)・下打ち(「キ」)・下払い打ち(「チン」)・真ん中打ち(「チャン」)がある。多用されるのは二丁づり(二丁鉦)であり、バチ(鉦スリ)はU字型になっていて玉が2個ついている。その握り方は、人差し指をU字の部分にかけて、後の指全部でにぎるものである。全て凹面打ちで、その奏法には、上打ち・下打ち(下払い打ち)・奥打ちがある。この二丁鉦が、どのような経緯で六斎念仏に使用されるようになったかということは、今後の検討課題となろう。

江馬務は桂地蔵前六斎念仏の奏法について、「太鼓の打ち方は、運動の幅が狭くて、活動が穏やかであまり下にさげない。鉦の打ち方も細かく、総じて桂のは上品というよりは地味である」〔江馬・井上 1953:76〕とのべている。

使用楽器(すべて)
〔写真4〕 使用する楽器

カッチン(堅太鼓)
〔写真5〕 カッチン(堅太鼓)
中ドロ(中太鼓)
〔写真6〕 中ドロ(中太鼓)

大ドロ(大太鼓)
〔写真7〕 大ドロ(大太鼓)

一丁づり(一丁鉦)
〔写真8・9〕 一丁づり(一丁鉦)
一丁づり(一丁鉦)

二丁づり(二丁鉦)
〔写真10〕 二丁づり(二丁鉦)
二丁づり(二丁鉦)の鉦スリ
〔写真11〕二丁づり(二丁鉦)の鉦スリ

笛
〔写真12〕 笛

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