上野正章
吉川英史の仕事は歴史、伝記研究、美学と多岐に亘る。しかしながら、彼が生涯をかけて追求した研究テーマを問うと、やはり日本音楽の美学研究に落ち着くに違いない。
最初の連載が「日本音楽観序説」であり、最初の単行本は『日本音楽の性格』である。さらに論文集のタイトルも『日本音楽の美的研究』で、晩年の仕事は『三味線の美学と芸大邦楽科誕生秘話』としてまとめられている。彼の仕事は日本音楽の美学を巡っていると言って良いほどである。
今回の展示では彼の日本音楽美学序説とも言うべき『日本音楽の性格』を取り上げ、その成立と影響を概観してみたい。