龍城千与枝
五十音図といえば、小学校のころに誰もが一度は目にした事がある、「アイウエオの表」を思い出すことであろう。国語の授業で目にしたそれは、「日本語の音韻表」として紹介されたのではないだろうか。しかし、この五十音が音韻表として完成するまでには、実はさまざまな変遷をたどっているのである。今回の展示は、五十音図の基礎ともいえる悉曇学系(声明系)の音図が、能や浄瑠璃などの音曲の秘伝書に利用されていることに注目したものである。五十音図の変遷を、芸術学、音楽学の観点から振り返ることで、それらが何のためにかかれ、使用されたのかを再考する機会をもちたいと考えている。