大久保真利子(大阪芸大)、小塩さとみ(宮城教育大)、蒲生郷昭(日大)、龍城千与枝(早稲田大)、廣井栄子(相愛大)、田中悠美子(義太夫協会)、寺田真由美(神戸大)、吉野雪子(国立音大)、久保田敏子、竹内有一
各種の三味線音楽の通ジャンル的音楽様式研究の活性化に向けて、町田佳聲の三味線音楽研究「三味線声曲における旋律型の研究」を再検証し、その問題点と新たな方向性を見出す。
三味線音楽は、多くの種目に分かれており、研究者もそれぞれ細分化・専門化している。また、三味線音楽以外のジャンルに比べて、研究者の数も多いわけではない。研究方法においても、音楽そのものを扱いその構造や特徴を抽出するというような研究が最近少なくなっている。音楽そのものよりも、むしろ三味線音楽を取り巻く周辺を扱うことが研究の主流といってもよい。
三味線音楽の音楽面を研究するとき、今でも必須文献となっているのは、町田佳声の「三味線声曲における旋律型の研究」である。これは、町田が各種の三味線音楽を通ジャンル的に見て、それぞれに共通する旋律型を見出そうとしたものである。これは、『東洋音楽研究第47号・第2分冊』として公刊されたが、その底本は、町田佳声が、東洋音楽学会例会で昭和30年11月から翌年10月にかけて行った、「日本音楽講座―三味線声曲の旋律型の研究」の謄写版テキストである。日本伝統音楽研究センターでは、その謄写版テキストを寄贈いただいたので、まずその見直し・検討作業から着手したい。
さらに、「三味線音楽の通ジャンル的音楽研究に向けて」と副題をつけたように、町田が提示した「共通する旋律型」という概念の検討や、新たな視点を模索していくための準備もしたいと思う。また町田は、レコード集の監修・解説という形でも研究成果を発表しており、時間があれば、これも検討材料に加える予定である。
以上のように、この共同研究会は、メンバー各位の専門種目に基づく研究発表をそれぞれ行うというよりも、全員の分担により一つの成果を目指すものである。これによって、三味線音楽研究者が通ジャンル的認識を持てるような枠組み作りを目指し、三味線音楽研究の活性化に寄与することを目標とする。