京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター

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図書室だより

京の芸能に見る創造の可能性-見え隠れする本歌取りの精神-

当センターでは平成22年11月7日(日)に今年度第2回公開講座「京の芸能に見る創造の可能性-見え隠れする本歌取りの精神-」を開催します。

日本の文化の中には、既にあるものを踏まえて新たなものを創造するという精神があります。特に和歌や連歌では「本歌取り」という手法で知られており、美術・芸能などでもそれに類した手法が多く用いられています。今回の公開講座では、各分野の専門家によって、そのような手法について各分野との共通点や相違点を考察していきます。

また、芸能における例として「八島もの」の実演をおこないます。「八島もの」とは平家物語の「屋島の戦い」を題材にしている芸能です。今回は能の「八島」、琵琶の「八島」、京舞の「八島」の実演をおこないます。

そこで今回は、当センターの所蔵資料から「京の芸能に見る創造の可能性-見え隠れする本歌取りの精神-」に関係するものを集めました。シンポジウムに参加するパネリストの著書や「八島もの」が収録されている音源資料や映像資料があります。これらによって予習をしていただいて、公開講座に参加していただくと、よりいっそう理解が深まることと思います。また、公開講座後に復習をしていただくことも出来ますので、是非ご利用ください。

八島もののエピソードと構成

  (序、前場、舞台設定) 屋島合戦のエピソード 修羅道の教経との戦い(能の創作)
嗣信(次信)最期 扇(那須与一) 錣引き 弓流し
平家物語 巻第11   1 2 3  
能「八島(屋島)」 【夕暮れの八島の浦】  
「釣の閑も波の上~」
、「しかも今宵は照りもせず~」
  1後 2(間狂言) 1前 【修羅の教経との戦い】 「また修羅道の鬨の声~」
地歌・上方舞「八島」(天明頃作曲か) 「西行法師のなげけとて~」  
義太夫・上方舞「弓流し物語」(幕末頃か)     2 1  
常磐津・舞踊「景清」(文化11年) (五条坂の遊廓)      
長唄・舞踊「官女」(文政13年) (平家の官女が魚売りに)   「波の哀れや壇ノ浦~」

平成22年度 第4回伝音セミナー『八島もの』を聴く 配布資料(竹内有一作成)より

当センター所蔵の「京の芸能に見る創造の可能性-見え隠れする本歌取りの精神-」に関する入門書・概説書のご紹介

名称をクリックすると資料の詳細情報を見ることが出来ます。

● 依田泰著『藤原定家―古典書写と本歌取―』(笠間書院 2005年)

「本歌取」とは、古歌の一部を用いて作歌する表現技法です。古くは古今和歌集にも登場しますが、表現技法として意識的に取り上げ、評価・確立していった人物は、藤原俊成と藤原定家でした(参考:『国史大辞典』12巻 吉川弘文館 1991年)。定家の確立した本歌取の技法には、様々な準則があります。筆者は、定家やその周辺の作品を上げつつ、広義と狭義の両面から「本歌取」に関する考察を進めています。

● 三宅襄著『能の鑑賞講座 二』(檜書房 1997年)
筆者が1950年代に雑誌連載した「能楽鑑賞講座」の一部をまとめた著書です。18点の作品を取り上げ、概要・特徴・舞台構成・登場する単語などを解説しています。能の八島も取り上げられていますので、公開講座の参考にどうぞ。
解説作品:高砂・巴・蝉丸・隅田川(角田川)・葵上・船辨慶(舟弁慶)・善知鳥(烏頭)・小督・黒塚(安達原)・俊寛(鬼界島)・紅葉狩・鉢木・養老・弱法師・八島(屋島)・大原御幸(小原御幸)・小鍛冶。
● 山下宏明編『軍記語りと芸能(軍記文学研究叢書12)』(及古書院 2000年)
『平家物語』をはじめとした「軍記物」を題材とした芸能について扱われています。扱っている芸能は仏教音楽・琵琶語り・幸若舞・講釈・瞽女唄・祭文・説経・能・狂言・江戸音曲と多岐にわたっています。平家琵琶のように物語そのものを語る芸能や、その物語を題材にしてつくられた芸能、さらにその芸能をもとに発展させてつくられた芸能があります。軍記物が日本の芸能において大きな役割を果たしていたことがわかります。「八島もの」と同じように展開した演目についても知ることができます。

その他の概説書・視聴覚資料

図書資料
シンポジウムに参加されるパネリストの著書や、「八島もの」に関する解説が掲載されている図書を集めました。
名称 制作者 出版・発行・販売者 出版年 請求記号
冷泉家・蔵番ものがたり : 「和歌の家」千年をひもとく (NHKブックス:1141) 冷泉為人著 日本放送出版協会 2009.8.30 288.3||Re
京都冷泉家の八百年 : 和歌の心を伝える 冷泉為人編 日本放送出版協会 2005.7.15 288.3||Re
冷泉家の至宝展 京の雅・和歌のこころ 京都文化博物館開館10周年記念特別展 冷泉家時雨亭文庫 NHK編集 NHK NHKプロモーション 1997 288.3||Re
冷泉家展 近世公家の生活と伝統文化 冷泉家時雨亭文庫 朝日新聞社編集 冷泉家時雨亭文庫 朝日新聞社 アサツーディー・ケイ 2002.2.16 288.3||Re
ことば遊びの文学史:新典社選書11 小野恭靖著 新典社 1999.4.12 910.2||On
日本歌学大系 第5巻 佐佐木信綱編 風間書房 1957.7.31 911.108||Ni||5
日本の歌謡 真鍋昌弘 [ほか] 編 双文社出版 1995.3 911.6||Ma
絵の語る歌謡史(いずみ昴そうしょ ; 2) 小野恭靖著 和泉書院 2001.10.25 911.6||On
韻文文学と芸能の往還:研究叢書360 小野恭靖著 和泉書院 2007.2.20 911.6||On
歌謡文学を学ぶ人のために 小野恭靖著 世界思想社 1999.10.20 911.6||On
中世歌謡の文学的研究:笠間叢書292 小野恭靖著 笠間書院 1996.2.25 911.64||On
近世歌謡の諸相と環境:笠間叢書326 小野恭靖著 笠間書院 1999.10.30 911.65||On
「隆達節歌謡」の基礎的研究:笠間叢書299 小野恭靖著 笠間書院 1997.2.25 911.65||On
「隆達節歌謡」全歌集 : 本文と総索引(笠間索引叢刊 ; 115) 小野恭靖編 笠間書院 1998.2.25 911.65||On
近世流行歌謡 本文と各句索引:笠間索引叢刊124 小野恭靖編 笠間書院 2003.2.28 911.65||On
琵琶法師の『平家物語』と能 山下宏明著 塙書房 2006.2.10 B11.5||Ya
平家物語の怪 能で読み解く源平盛衰記 井沢元彦著 大槻文蔵能楽解説 世界文化社 1999.1 B11.613||Iz
京舞名匠佐多女藝談 : 井上流舞集成 堂本寒星著 河原書店 1947.10.20 C1||Do
日本舞踊図鑑 郡司正勝 龍居竹之介監修 国書刊行会 1999.2 C1||Gu
井上八千代藝話 片山慶次郎著 河原書店 1967.4.20 C1||In
京舞井上流歌集 井上八千代監修 祗園八坂女紅場学園 祇園八坂女紅場学園 1965.3.10 C1||Ky
日本舞踊曲集成2 京舞・上方舞編:別冊演劇界 伝統芸能シリーズ 岡田万里子編著 演劇出版社 2005.7.15 C1||Ni||2
日本舞踊全集 第6巻 演目解説6(みつ~よし) 日本舞踊社編 日本舞踊社 1987.10.1 C1||Ni||6
日本舞踊大鑑 第2巻 玄珠編 和角仁責任編集 創紀房新社 1982.6.25 C1||Wa||2-1

視聴覚資料
「八島もの」が収録されている各ジャンルの視聴覚資料があります。
タイトル 製作者 出版社 出版年 種別 備考
検校三品正保の芸術 没後十年追福 三品千代子 制作・発行 東芝EMI 1996.4.7 CD 平家「八島」を収録
平曲 平家琵琶 須田誠舟 バンダイ・ミュージック 1998.7.1 CD 平家「八島」を収録
Noh Biwa Shakuhachi recorded in 1941 (Japanese Traditional Music) Arbiter 2009 CD 能(金剛流)「八島」を収録。昭和16年録音のレコードの復刻。
仕舞謡集1 観世流謡曲 観世寿夫 能楽名盤会 CD 能(観世流)「屋島」を収録。
独吟集2 喜多流謡曲 喜多実 能楽名盤会 CD 能(喜多流)「八島」を収録。
日本の胡弓 杉浦聡の世界 杉浦聡 S-TWO 2003 CD 地歌「八島」を収録。
箏曲地歌大系 第1巻 . 組歌・段物・砧物・地歌 13 [ビクター伝統文化振興財団] 2002.6.21 CD 地歌「八島」を収録。
荻江節1・2:古曲の今 古曲会監修 竹内道敬解説 日本伝統文化振興財団 2006.9.6 CD 荻江節「八島」を収録。
観世流仕舞集 第2巻 観世清和 ビクター音楽産業 1986 VHS 能(観世流)「屋島」を収録。

この他にも各ジャンルの図書・視聴覚資料を所蔵しております。収蔵資料はこちらで検索できますので、ご利用ください。


公開:2010年10月05日 最終更新:2018年04月05日

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