京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター

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図書室だより

落語と見世物

当センターでは、6月27日に今年度第2回公開講座「落語・音曲・芝居 創作和風味遊辞歌瑠(ミュージカル)―「らくだ」に見る芸能の交流」を開催しました。

平成21年度第2回公開講座「落語・音曲・芝居 創作和風味遊辞歌瑠―「らくだ」に見る芸能の交流」より

平成21年度第2回公開講座「落語・音曲・芝居 創作和風味遊辞歌瑠―「らくだ」に見る芸能の交流」より

動物のラクダは文政4年(1821)にオランダ船に乗せられ、日本にやってきました。そして、珍しい動物として大坂・京都・江戸などで見世物となりました。やがてそのラクダをヒントに、「らくだ」とあだ名がつけられた人物が登場する「らくだ」という落語が作られました。落語の「らくだ」は昭和初期に歌舞伎に取り入れられ、「眠駱駝物語(ねむるがらくだものがたり)」という作品になります。さらに、今から20年ほど前に新しく創られたのが、創作和風味遊辞歌瑠―「らくだ」です。

落語は「らくだ」のように、当時の世相を反映させて作品がつくられていました。また、他のジャンルの芸能を取り入れて作品をつくることもありました。芝居噺や音曲噺などが特徴的です。「らくだ」には、ちょうどラクダが来たのと同時期に、中国から長崎に伝わった「カンカンノウ」という音曲が取り入れられています。

今回は落語と見世物に関する収蔵資料を集めました。落語以前の話芸に関する図書や落語の歴史に関する図書、落語のテキストが集められた図書もあります。また、音源資料では、SPレコードをCDに復刻したものもあり、昭和初期の落語を聴くことができます。
また、見世物については、見世物を分類・編年し資料を集めた図書や絵や写真を多く掲載し見世物を概観することができる図書などがあります。 落語や見世物から、江戸時代の社会の様子や、人びとの楽しみがどんなものだったのかということを探ってみましょう。

当センター所蔵の落語・見世物関連資料のご紹介

名称をクリックすると資料の詳細情報を見ることが出来ます。

● 『落語・歌舞伎あわせ鏡』(清水一朗著、三一書房、1998年)
落語には歌舞伎から題材をとったものが多くあります。江戸時代の人びとにとって、歌舞伎は最大の娯楽でした。落語を楽しむ人々にとって歌舞伎の内容はまさに共通認識であり、その歌舞伎のパロディを取り入れることで、落語は人びとに大いに受け入れられていきました。
『歌舞伎・落語あわせ鏡』では歌舞伎の内容が落語にどのように取り入れられているかを解説しています。落語で普通の登場人物や言葉のように聞こえても、実は歌舞伎の登場人物や台詞のパロディであるということもあるようです。歌舞伎を知っていると落語がさらに面白くなると思います。
●  『昭和戦前面白落語全集-東京篇・上方篇-』(CD)(日本音声保存企画・制作、日本音声保存(発行)エニー(発売)、2006年)
昭和前期に発行された落語のSPレコードをCDに復刻したものです。東京篇180、上方篇約60もの落語が収められています。当時の世相を反映させた噺や古典落語でも今とは違う部分があるものもあります。また、落語はライブならではの面白さがありますが、レコードでは片面3分という時間的な制約や、お客さんを目の前にしてのライブ録音ではないという制約がある中で、レコードならではの工夫がされています。
 『見世物はおもしろい(別冊太陽123号)』(川添裕・木下直之・橋爪紳也編、平凡社、2003年)
江戸後期から明治にかけて、見世物の文化は隆盛を極めました。娯楽の少なかった時代、人々はごく自然に見世物に刺激を求めました。見世物には、ラクダなどの珍獣や、籠細工、本物そっくりの生人形、巨大パノラマなど様々なものがありました。その世界は、珍奇であるだけでなく、退廃性や、官能性をも内包し、現代からは考えられないほど自由で、混沌とした面白い世界を生み出しています。この本では、現代では想像し難い、見世物興行が隆盛を極めた時代を視覚的に分かりやすく解説し、見世物文化にスポットを当てることで幕末・明治時代を考察しています。
『見世物研究』(朝倉無聲著、思文閣出版、1977年)
筆者は明治生まれで、帝国図書館の司書であった朝倉無聲でした。センター所蔵のこの本は1928年に出版された本の復刻版です。「見世物は所謂際物だけに,新陳代謝も亦激甚であった」と筆者が冒頭で述べるように、見世物は大衆の中で受け入れられた際物的な文化でした。その文化は、明治時代のいわゆる美術の制度化の流れからは除外されていたために、当時の研究資料なども限られています。しかし、筆者はこの大衆文化の記録を残そうと、1冊の本にまとめました。没後出版でもあり、筆者の最終的な校正に至らなかったことによる遺漏なども指摘されていますが、朝倉無聲の『見世物研究』は見世物を研究する上での総合的原典ともいわれています。この本では、どういった種類の見世物が、どこで、どのように興行されたのか、ということが丁寧に書かれていて、現在では想像しがたい見世物の世界を垣間見ることができます。

落語・見世物に関する資料リスト

上記で紹介した以外の当センター所蔵の落語・見世物に関する資料をご紹介します。 これらの資料は当センター図書室の閲覧室で閲覧が可能です。

話芸の歴史に関する図書
落語の成立に至るまでの話芸の歴史に関する図書です。
話芸は仏教の内容を庶民に分かりやすく説く「説教」の影響を強く受けていることが分かります。
タイトル 著者 出版者 出版年 請求記号 種別
説教の歴史 仏教と話芸:白水uブックス1026 関山和夫編 白水社 1992.7.10 187||Se 図書
庶民文化と仏教(日本仏教のこころ) 関山和夫著 大蔵出版 1988.8.10 B11.4||Se 図書
仏教と民間芸能 関山和夫著 白水社 1986.4.10 B11.4||Se 図書
仏教と民間芸能:白水叢書66 関山和夫著 白水社 1982.12.20 B11.4||Se 図書
醒睡笑 戦国の笑話:東洋文庫31 安楽庵策伝著 ,鈴木棠三訳 平凡社 1977.8.1 東洋文庫31 図書
話藝 その系譜と展開 伝統芸術の会編 三一書房 1977.9.30 B14||De 図書
落語に関する図書
落語の鑑賞、噺家の著書、落語の歴史、落語のテキストなど落語に関する様々な図書を集めました。
落語から当時の様子を考察する図書もあります。
タイトル 著者 出版者 出版年 請求記号 種別
江戸芸能・落語地名辞典 上巻 あ~そ 北村一夫著 六興出版 1985.3.5 779||Ki||1 図書
江戸芸能・落語地名辞典 下巻 た~わ 北村一夫著 六興出版 1985.5.5 779||Ki||2 図書
原典落語集:叢書江戸文庫45 二村文人校訂 高田衛 原道生責任編集 国書刊行会 1999.11.20 918.5||So||45 図書
日本の幽霊 能・歌舞伎・落語:朝日カルチャーブックス24 権藤芳一 中川彰 露乃五郎著 大阪書籍 1983.6.20 B10||Go 図書
らくごまんだら 相羽秋夫著 東方出版 1983.11.14 B14||Ai 図書
現代上方落語人録 相羽秋夫著 弘文出版 1981.10.10 B14||Ai 図書
新現代上方落語人録 相羽秋夫著 弘文出版 1986.1.20 B14||Ai 図書
上方落語かたいれ事典 相羽秋夫著 弘文出版 1982.10.15 B14||Ai 図書
落語鑑賞 安藤鶴夫著 東京創元社 1960.3.20 B14||An 図書
名作聞書 上 落語と講談 安藤鶴夫著 読売新聞社 1955.6.25 B14||An||1 図書
名作聞書 下 落語と講談 安藤鶴夫著 読売新聞社 1955.8.15 B14||An||2 図書
江戸の花街「遊廓」がわかる:落語カルチャーブックス 志ん生で味わう江戸情緒2 凡平著 技術評論社 2005.9.1 B14||Bo 図書
日本人の笑いと落語 歴史との相関 布施昌一著 三一書房 1970.7.15 B14||Fu 図書
なにわの急ぎ星 ドキュメント林家小染 古川嘉一郎著 たる出版 1985.1.3 B14||Fu 図書
落語の女 かかあ天下の江戸の町:サンポウ・ブックス 加太こうじ著 サンポウジャーナル 1978.8.20 B14||Ka 図書
落語 大衆芸術への招待:教養文庫 加太こうじ著 社会思想研究会出版部 1962.1.15 B14||Ka 図書
上方落語ノート 桂米朝著 青蛙房 1978.12.5 B14||Ka 図書
米朝上方落語選 [正] 桂米朝著 立風書房 1975.11.10 B14||Ka||1 図書
続米朝上方落語選 続 桂米朝著 立風書房 1972.8.20 B14||Ka||2 図書
上方落語1:桂米朝集成 第1巻 桂米朝著 ,豊田善敬, 戸田学編 岩波書店 2004.11.2 B14||Ka||1 図書
上方落語2:桂米朝集成 第2巻 桂米朝著 ,豊田善敬, 戸田学編 岩波書店 2004.12.3 B14||Ka||2 図書
上方文化:桂米朝集成 第3巻 桂米朝著 ,豊田善敬, 戸田学編 岩波書店 2005.1.26 B14||Ka||3 図書
師・友・門人:桂米朝集成 第4巻 桂米朝著 ,豊田善敬, 戸田学編 岩波書店 2005.2.25 B14||Ka||4 図書
まるく、まぁーるく桂枝雀 廓正子著 サンケイ出版 1981.9.10 B14||Ka 図書
上方落語の歴史 前田勇著 杉本書店 1966.10.1 B14||Ma 図書
落語通談 野村無名庵著 高松書房 1943.9.15 B14||No 図書
古典上方落語 上 笑福亭松鶴著 講談社 1973.11.24 B14||Sh 図書
落語にみる日本の旅文化 旅の文化研究所編 河出書房新社 1995.12 B14||Ta 図書
現代落語論 笑わないで下さい 立川談志著 三一書房 1965.12.6 B14||Ta 図書
落語の鑑賞 渡邊均著 大阪新興出版 1949.1.15 B14||Wa 図書
落語遊歩道 矢野誠一著 協同企画出版部 1967.5.30 B14||Ya 図書
落語 矢野誠一著 三一書房 1970.9.30 B14||Ya 図書
柳家花緑の落語:日本の伝統芸能はおもしろい2 小野幸恵著 岩崎書店 2002.3 F1||On||2 図書
新編 落語の落1:東洋文庫611 海賀変哲著 小出昌洋訳 平凡社 1997.6.10 東洋文庫611 図書
新編 落語の落2:東洋文庫615 海賀変哲著 小出昌洋訳 平凡社 1997.4.9 東洋文庫615 図書
講談落語今昔譚:東洋文庫652 関根黙庵著 山本進編 平凡社 1999.4.7 東洋文庫652 図書
見世物に関する図書
見世物を資料から分析し、江戸時代の見世物がどんなものであったのかということを解明している図書や、現代の見世物を取材し解説している図書などがあります。
タイトル 著者 出版者 出版年 請求記号 種別
大道芸と見世物(大系日本歴史と芸能 ; 第13巻) [本編] 網野善彦 [ほか] 編 平凡社 1991.1 A1||Am||13 図書
大道芸と見世物(大系日本歴史と芸能 ; 第13巻) ビデオカセット 網野善彦 [ほか] 編 平凡社 1991.1 A1||Am||13 VHS
見世物研究 3版 朝倉無聲著 思文閣出版 1991.1.1 B14||As 図書
見世物研究 姉妹篇 朝倉無声著 川添裕編 平凡社 1992.5.7 B14||As 図書
見世物はおもしろい:別冊太陽 日本のこころ 川添裕, 木下直之, 橋爪紳也編 平凡社 2003.6 B14||Ka 図書
江戸の見世物:岩波新書 新赤版681 川添裕著 岩波書店 2000.7.19 B14||Ka 図書
見世物雑志 小寺玉晁著 郡司正勝 関山和夫編 三一書房 1991.12.31 B14||Ko 図書
見世物稼業 -安田里美一代記 鵜飼正樹著 新宿書房 2000.3.31 B14||Uk 図書
日本の放浪芸 小沢昭一著 白水社 2004.6.30 B14||Oz 図書
放浪芸雑録 小沢昭一著 白水社 1999.7.30 B14||Oz 図書
大道芸・寄席芸:日本の伝統芸能7 大野桂著 小峰書店 1995.4 A1||Ni||7 図書
寄席・見世物 (日本庶民文化史料集成 ; 第8巻) 藝能史研究會編 関山和夫[ほか]編 三一書房 1985.6 A1||Ge||8 図書
落語・見世物に関する音源資料
上記で紹介したCDのほかに、出囃子や「はめもの」などを収録したCDや、さまざまな話芸や見世物小屋の情景を収録したCDがあります。
タイトル 制作者 出版者 備考 請求記号 種別
上方落語寄席囃子集 林家とみ[ほか] コロムビアミュージックエンタテインメント 2008.5.21 CD
日本の放浪芸 小沢昭一取材・構成 ビクターエンタテイメント 1999.12.16 CD7枚組
ドキュメント 又日本の放浪芸 小沢昭一が訪ねた渡世芸術 小沢昭一取材・構成 ビクターエンタテイメント 1999.12.16 CD5枚組
公開:2009年08月25日 最終更新:2018年04月05日

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