京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター

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プロジェクト

2010年度 プロジェクト研究
歌と語りの言葉と「ふし」の研究 日本伝統音楽研究の視点と方法

研究代表者名

藤田 隆則  Takanori Fujita

共同研究者名

今田健太郎、上野正章、内田順子、遠藤徹、奥中康人、小塩さとみ、金城厚、久保田敏子、後藤静夫、 薦田治子、近藤静乃、斉藤桂、柴佳世乃、島添貴美子、Silvain Guignard、田井竜一、竹内有一、細川周平、山田智恵子

研究の趣旨(目的・意義・特色など)

日本の伝統音楽の諸種目の多くが、歌詞をもった音楽(いわば声楽)である。近年、楽器の演奏において唱歌(しょうが)をとなえることの有用性が、しばしば強調される。また現代、旋律、旋律型等を意味する総称としての「ふし」という言葉も、実際には声楽に対してつかわれることが多い(「ピアノのふし」とは言いにくい)。これらのことによっても、日本の伝統音楽における声楽優位は明らかであろう。

そういった現実があるにもかかわらず、声楽の研究にはあまり焦点が当てられない。たとえば、本研究が焦点をあてようとする、歌と語りにおける言葉と「ふし」の関係というテーマは、不完全燃焼の状態で放置されたままであるように思われる。

この不完全燃焼の背後には、学問の制度上の問題がある。歌詞の研究者(主に国文学)は、歌詞の内容解釈を優先させるため、形式の研究は当然後回しになろう。一方、音楽の研究者(音楽学)も、音楽を自立したシステムとして解釈する営みを中心に置こうとすると、言葉のない音楽を中心にせざるをえない(「音楽」という語が伝統的に器楽をさしてきたことも背景にあろう)。

結局、言葉に「ふし」が生成するメカニズムの研究は、応用的領域(後回し!)となってしまったのだが、もちろん、その大切さが学問上で認識されていないわけではない。今から30年さかのぼる1970年代まで、言葉と歌(speech and song)の境界をめぐる問いは、一般音楽学でも主流の問いのひとつだった。また、日本においても数は少ないものの、同じ関心にもとづいた、言葉のアクセント・拍節研究が行われてきたのである。こうした先達のまなざしや試みにふれつつ、一般音楽学の問いにもういちど立ち戻ることには、日本伝統音楽研究の固有の対象が何かを見定め続けるためにも、大きな意味があるだろう。

備考

課題と作業


上の趣旨をふまえ、研究会では、3つの課題に焦点をあて、作業をおこなう。




  • 声、言葉、「ふし」(旋律)に焦点をあてる古い研究文献紹介-
    主に、第二次大戦前までの業績に焦点をあてる。したがって、分野は、物理学(音響学)、心理学、哲学、文学史、文化史、作曲理論等にわたることになるだろう。研究会においては、本の紹介と研究史上での位置づけ、また、利用価値についても考える。

  • 現代の文献および海外の文献等の紹介-
    一般音楽学へむけて、Speech and Song の境界についての諸論考(地域をとわず)、唄の旋律生成、作曲方法等をめぐる近年の研究動向をよくしめす論文等、アクセント、音韻研究(国語学)、歌謡研究(国文学)等の紹介等、「ふし」生成の研究にかかわるものなら、何でもとりあげる。

  • 「うた/かたり/ことば/せりふ」等をめぐる個人発表-
    それぞれの参加者が自分の研究領域のデータ等にもとづいて、諸モードの境界と相互関係について考えたり、ふしの生成における言葉の作用について考えたり、等、自由発表をおこなう。

公開:2010年06月01日 最終更新:2018年04月06日

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