日本伝統音楽研究センター
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上方座敷歌の研究

 

上方座敷歌集成 目次 か行一覧


数え歌(ヨサホイ節)

歌詞
一つと出たわいな ヨサホイのホイ
一人娘とする時にゃホイ
親の許しを得にゃならぬ ホイホイ
ニつと出たわいな ヨサホイのホイ
二人娘とする時にゃ ホイホイ
姉の方からせにやならぬ ホイホイ
三つと出たわいな ヨサホイのホイ
醜い女とする時にや ホイホイ
ハンカチかぶせて せにゃならぬ ホイホイ
四つと出たわいな ヨサホイのホイ
よその二階でする時にゃ ホイホイ
音のせぬよに せにゃならぬ ホイホイ
五つと出たわいな ヨサホイのホイ
いつもの女とする時にゃ ホイホイ
たまにゃ 茶臼もせにゃならぬ ホイホイ
六つと出たわいな ヨサホイのホイ
昔馴染みとする時にゃ ホイホイ
腰の抜けるほど せにゃならぬ ホイホイ
七つと出たわいな ヨサホイのホイ
なんきん畑でするよきにゃ ホイホイ
かぼちゃ枕にせにゃならぬ ホイホイ
八つと出たわいな ヨサホイのホイ
やまい女とする時にゃ ホイホイ
くすり瓶片手に せにゃならぬ ホイホイ
九つと出たわいな ヨサホイのホイ
子持ち女とする時にゃ ホイホイ
後の方からせにゃならぬ ホイホイ
せにやならぬホイホイ
十と出たわいな ヨサホイのホイ
尊いお方とする時にゃ ホイホイ
羽織袴でせにゃならぬ ホイホイ

解説
ヨサホイ節の元歌は大正13年(1924)広島の演歌師秋月四郎が若い二人の別離を歌った文句(作者不詳)だ。
その後数え歌形式の替歌が数多く作られた。
語釈
一つから十まで秘めごとのパロディーである。

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数え歌(一つともせ)

歌詞
あーりゃ 一つともせー いんえー 
人目のあるのに 乗れ乗れと いんえー 
乗ったら 行きます もっちゃげます トコ姉さん 
色ではないぞえ 人力車のことかいな いんえー
あーりゃ 二つともせー いんえー
ふんばって 入れたる 心地よさ いんえー
太くても 細くても きっちり一杯よ トコ姉さん 
色ではないぞえ メリヤスパッチの えー ことかいな いんえー
あーりゃ 三つともせー いんえー
見たときゃ でかいように 思ったけれど いんえー
はめてみりゃ さほどのことはない トコ姉さん 
色ではないぞえ 純金指輪の ことかいな いんえー
あーりゃ 四つともせ いんえー
横でまた しましょうか こちの人 いんえー
めくるも 早けりゃ 世話がない トコ姉さん 
色ではないぞえ 飯場帳面の えー ことかいな いんえー
あーりゃ 五つともせー いんえー
息のまた はずむほど こたえます いんえー
もうちょっと やわやわ しておくれ トコ姉さん 
色ではないぞえ あんま治療の えー ことかいな いんえー
あーりゃ 六つともせー いんえー
胸まで ピッタリコと あてごうて いんえー
お前より 私の方が 上つきよ
色ではないぞえ 外套ボタンの えー ことかいな いんえー
あーりゃ 七つともせー いんえー
撫でりゃ またついでに ちょいと 紙をくれ いんえー
人のまだ来ぬ まにしてしまお 
色ではないぞえ ランプ掃除の えー ことかいな いんえー
あーりゃ 八つともせー いんえー
やれ行く それ行く 心地良さ いんえー
もうちょっと 奥の方まで 入れておくれ
色ではないぞえ 満員電車のえー ことかいな いんえー
解説
数え歌は、お座敷でいろいろ作られたが、いんえー数え歌も其の一つで、性的比喩に一ひねり工夫されてるところが色町らしい特徴か。
語釈
おちにこの歌の面白さ、洒落けが籠められている。他にも各地の花街で、それぞれ土地柄にあわせて作られた替え歌も数多くあるようだ。

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数え歌(正月数え歌)

歌詞
正月や 正気でしたがる させたがる
させたがる 娘もしたがる カルタとり カルタとり
二月や 逃げる娘を とっつかまえて  〃
無理やりするのが 拭き掃除  〃
三月や さあさおいでと 胸ひろげ  〃
お乳をさし出す 乳飲み子へ  〃
四月や しかけたところに、人が来て  〃
しぶしぶやめるは ヘボ将棋  〃
五月や 後家さんたまには するがよい  〃
夫の命日 墓参り  〃
六月や ろくろく夜も 眠らずに  〃
徹夜でするのが 試験前  〃
七月や 人目もかまわず いとわずに  〃
裸で抱きつく 相撲取り  〃
八月や 入ったと思ったら また抜けた  〃
唾つけ差しこむ 針の穴  〃
九月や 暗い所で ごそごそと  〃
穴を見つめる 写真屋さん  〃
十月や とうでとうとう 汁がでた  〃
弁当のおかずの 汁が出た  〃
十一月や 十一回目の へとへとで  〃
それでも野球の 延長戦  〃
十二月や 十二時ですよと、妻がいう  〃
それではしようか 昼ご飯  〃
解説
数え歌の一つ、性的比喩を読みこみながらも、ズバリと表現しないところが、お座敷の特徴といえよう。
語釈
比喩を楽しむのみ……

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数え歌(ひとつは正月のことなれや)

歌詞
一つとや ひとつは正月のことなれや ことなれや
門松なんぞは コリャどうじゃ
二つとや ふたつは二日のことなれや ことなれや
豆まきなんぞは コリャどうじゃ
三つとや みっつは三日のことなれや ことなれや
おひなまつりは コリャどうじゃ
四つとや よっつは四日のことなれや ことなれや
おしゃかさまとは コリャどうじゃ
五つとや いつつは五日のことなれや ことなれや
竹馬なんぞは コリャどうじゃ
六つとや むっつは六日のことなれや ことなれや
お田植なんぞは コリャどうじゃ
七つとや ななつは七日のことなれや ことなれや
七夕なんぞは コリャどうじゃ
八つとや やっつは八日のことなれや ことなれや
お彼岸なんぞは コリャどうじゃ
九つとや ここのつは九日のことなれや ことなれや
菊見酒とは コリャどうじゃ
十とや とお一は十日のことなれや ことなれや
お月見なんぞは コリャどうじゃ
十一とや 十一は十一日のことなれや ことなれや
もみじなんぞは コリャどうじゃ
十二とや 十二は十二日のことなれや ことなれや
餅つきなんぞは コリャどうじゃ
解説
お座敷遊びの一つ。割箸と盃を使い歌のあいだにテーブルの上に絵を書く。
終わりの行事などは絵の都合で適当に変えることもある。
たとえば門松が羽子板や姫始めに変わったりする。

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からかさ

歌詞
1. からかさの、骨はバラバラ 紙や 破れても、離れ離れまいそえ 千鳥掛
2. 汽車は一等車、あの差し向かい ゆられ ゆられて 立ちおそそ いいわね いいわね
3. 汽車は汽車は出ていく 煙は残る、残る煙が、しゃくの種
4. 駅は駅は、近づく まだ気はゆかぬ あなた ふいて抜いて またしましょ
5. 汽車は汽車は、出てゆく またやり直し、ゆられゆられて 気がいった
いいわね いいわね、たもとたもと探せど紙が無い
解説
元歌は端歌。流派によっては小唄でも歌われる。
語釈
1. の元歌は、こまやかな男・女間の愛を歌う。
2. から5. はズバリ営みを表現、春歌といえよう。

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川風

歌詞
川風に つい誘われて 涼み舟 
文句もどうか 口舌して
粋なすだれの 風の音に
洩れてきこゆる しのび駒
いき(粋)な世界に 照る月の
中を流るる 隅田川
解説
小唄 本調子。
語釈
忍び駒 三味線の音が高くならないようにする特殊な駒。
隅田川での川遊びのさまが歌われている。

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河太郎

歌詞
すすき かついだ(で) 河太郎 かぼちゃ畑を ぶらぶらと
酒か団子か いい(良い)機嫌(かげん)
用水堀の うすどろを さそふ 雨家の 小夜ふけて
月に遠音の 村ばやし
解説
小唄 二上り。
語釈
河太郎 河童の異称。がたろ。
遠音 遠くから聞こえてくる音。
河童のユーモラスな姿を描写しながら長閑な農村を浮かび上らせている。

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かんちろりん

歌詞
ひかえろ ひかえろと あの制止声はさ
お江戸でさ かんちろん 武蔵でさ お江戸でさ
大久保彦左衛門の登城登城 下にろ 下にろと
あの行列はさ 大坂でさ かんちろりん
大坂でさ 難波でさ 木村長門守の 上使 上使
お手がなる お手がなる あの奥座敷さ
お客とさ かんちろりん 芸妓とさ 仲居とさ
さしつさされつ 銚子 銚子
解説
上方端唄 俗曲。大久保彦左衛門の登城の行列。木村長門守の血判取りの上使の行列などを歌う。
語釈
武蔵 武蔵の国 現在の東京都
大久保彦左衛門 徳川家康の老臣。後に徳川幕府のご意見番となった。
木村長門守 豊臣秀頼の家臣。大阪冬・夏の陣で八面六臂の活躍の後、討死。花も実もある武将といわれた。

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紀伊の国

歌詞
紀伊の国は 音無川の 水上に 立たせ給うは 船玉山 船霊十二社 大明神 
さて東国に至りては 玉姫稲荷が三囲(みめぐり)へ 狐の嫁入り お荷物を かつぐは合力 稲荷さま 頼めば田町の 袖摺(そですり)が さしづめ今宵の(は) 待女郎
仲人は 真崎(まさき)真黒な 九郎助 荷につつまれて 子までなしたる 信田妻(しのだづま)
解説
端唄 うた沢 本調子。
安政期(1854-60)の成立、滝川真政次郎著「吉原の四季」によると作曲者不詳。作詞は関匡(ただす)と玉松千年人(ちねと)(新宮藩士)。校閲は二世川上不白。
語釈
紀州で行われていた神下ろしの祭文(さいもん)を冒頭に置き、その中で歌われる音無川を伏線として
場面を吉原周辺の稲荷社へ切りかえられる。玉姫、三囲、合力、袖摺、真崎、九郎助の
各稲荷社を詠みこみながら狐の嫁入りを歌っている。
音無川 和歌山県東牟婁郡の熊本本宮の横を流れて熊野川に合流する川。
侍女郎 婚礼の際戸口に立って新婚の到着を待ち手をとって家に導きいれ、また付き添って世話えをする女。
信田妻 信太妻とも。信太の森の葛(くず)の葉狐が、安倍保名と結婚し一子をもうけた伝説の主。

ぎっちょんちょん

歌詞
1. 高い山から谷底みれば ギッチョンチョン ギッチョンチョン
瓜や茄子(ナスビ)の花ざかり
オヤマカドッコイ、ドッコイ ヨーイヤナ ギッチョン ギッチョン
2. (以下はやし言葉省略)
丸い卵も切りよで四角 ものもいいよで 角(カド)が立っ
3. 寝たし食べたし したし 私しゃ あなたに好かれたい
色気と食い気と貯め気のあるうちゃ 長生きしたい
3. 悪いことすりや交番所にひかれ 赤いべべ着て 縄をなう
解説
この歌は天保(1830-44)の頃に流行した「ヒヤホン節」が、明治初年頃から寄席や酒席で、
ギッチョンチョンに変化したといわれる。
ギッチョンチョンは、清国の弁髪、豚尾兵(チャンチャン坊主)にかけている。
語釈
3. 赤いべべは囚人服のこと。いずれもアテ振りがついている。

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京の四季


歌詞
春は花 いざ見のこんせ東山 
色香あらそう夜桜や
浮かれ浮かれて 粋も不粋も物堅い
二本差しても柔こう 祇園豆腐の二軒茶屋、
御喫(みそぎ)そ夏は 打ち連れて 
河原に集う夕涼み 
よいよいよいやさ、
真葛ヶ原にそよそよと 秋の色増す花頂山
時雨をいとふ唐傘に 濡れて紅葉の長楽寺 
想いぞ積もる丸山に 今朝も来て見よ雪見酒
エエ そして櫓(やぐら)の差し向かい 
よいよいよいやさ
解説
上方端歌。水野左衛門万空作詞、作曲者不詳。京都の四季を名所景物を織りこんで歌ったもの。落語の「大丸屋騒動」で、はめものとして使われる
祇園では現在でも宴の幕明けに舞妓がこの曲を舞うことが多い
語釈
東山 京都市の鴨川の東に連なる丘陵。
祇園豆腐 京都の八坂神社桜門前の二軒茶屋で売った田楽豆腐、串に刺した豆腐を焼き練味噌を塗って更に焼いたもの。
御襖ぞ夏 夏越の祓をいう。
河原 四条河原のこと。
真葛ヶ原 葛の生えている原。
花頂山 京都知恩院の山号で華頂山とも。京都市東山の一部。
時雨 晩秋に降る時雨、空は晴れているのに思いもよらぬ雨が降りまもなく止むが何か侘しい雨である。
長楽寺 京都市東山区の円山公園にある時宗の寺で延暦寺の別院。
雪見酒 雪の降った景色を観賞する時に飲む酒。日本古来からの風雅とされ宮廷人には欠かせない風流であった。

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串本くずし(浪曲串本ぶし)

歌詞
1. ここは串本 向かいは大畠 思い出すなは そりゃ無理よ
燃えて 明かした潮の音 逢瀬はかなく 幸うすく
添えぬ二人と 知りながら 中をとりもつ 巡航船
アラヨイショ ヨーイショ ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ
2. 霧の灯台 なせなせうるむ 沖のかもめも 夫婦なら
波に浮き寝を 耐えよもの まして人の子 こんな夜は
そぞろ情けの 恋しさに 泣けば灯が なお見えね
アラヨイショ ヨーイショ ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ

3. 便り絶えても 思いは絶えぬ 暗い夜更を 浜づたい
呼ぶは生命と きめた人 けむるしぶきの その中に
花の笑顔を 追いながら 絶えぬ思いを海の上
アラヨイショ ヨーイショ ヨイショ、ヨイショ、ヨイショ

解説
和歌山県民謡の串本節をもとにして浪曲風に編曲されたもの。流行民謡。
語釈
串本節の項参照。

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串本節

歌詞
 
1. ここは串本 向かいは大島
仲を取り持つ巡航船
アラヨイショヨイショヨイショヨイショ
2. おまえ あっちや向け
わしゃ こっちゃ向いて
背中合わせて寝るこ3寝たが
やっぱり気になる
こっちゃ向いて抱いてんか
アラヨイショヨイショヨイショヨイショ
3. 奈良の鹿のぼんぼの毛は
筆にはなるが 嬶のぼんぼの毛は
フッ(吹く)邪魔になる。
アラヨイショヨイショヨイショヨイショ
解説
和歌山県民謡 お座敷芸としてアテ振りあり。
語釈
1. 串本港と対岸の大島の間を行き来する巡航船に託して、男・女の愛をうたっている。
2. 単純な歌詞のなかに、男女の機微がこめられている。
3. 奈良の鹿に託して おおらかな性的比喩がうたわれる。

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桑名の殿様

歌詞
1. 桑名の殿様 ヤンレ ヤートコセー ヨーイヤナ
桑名の殿様 しぐれで茶々漬 ヨーイトナ
アーレハ アリャリャン リャヨーイトコ ヨーイトコナー
2. 泣き泣き入れるは ヤンレ ヤートコセー ヨーイヤナ
泣き泣き入れるは 六条さんのさいせん箱
ヨーイトナ アーレワアリヤーリヤンリヤ
ヨーイトコ ヨーイトコーナー
3. 源氏は白旗 ヤンレ ヤットコセー ヨーイヤナ 
源氏は白旗 天保山は沖の旗
解説
三重県民謡。江戸末期木遣歌(きやりうた)からお座敷歌になったもの。1. は元歌。
替歌も数多く作られた。
語釈
桑名は三重県北東部の市。もと本多。松平氏の城下町。時雨蛤で有名。
しぐれは時雨のこと。
六条は東西本願寺のこと

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軍隊小唄

歌詞
1. 嫌じゃありませんか 軍隊は
かねのお椀に 竹の箸
仏様でも あるまいに
一膳飯とは 情けなや
2. 腰の軍刀に すがりつき
連れてゆかんせ どこまでも
連れてゆくのは やすけれど
女は乗せない 戦車隊
3. 女乗せない 戦車なら
緑の黒髪 断ち切って
男姿に 見をやつし 
ついてゆきます どこまでも
解説
元歌の「ほんとにほんとに御苦労ね」は倉若晴生、山中みゆきの歌でポリドールからでた。替歌は第2次大戦末期にかけていろいろと作られた。
(元歌)
野村俊夫作詞 1939年
柳芽をふくクリークで
泥にまみれた軍服を
洗う姿の 夢を見た
お国の為とは いいながら
ほんとに ほんとに 御苦労ね
以下4番まであり、中国戦線のことが歌われる。
語釈
1~3の他の替歌も、ぎりぎりの所で反戦、厭戦の想いがこめられている。

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こうもり

歌詞
騙輻(こうもり)が出て来て浜の夕涼み
川風 さっと吹く牡丹
あらいしうちの色男、
いなさぬ いなさぬ いつまでも、
浪花の水にうつる(す)姿へ
解説
上方端歌。うた沢。後に小唄にも1829年七世市川団十郎が上阪したときに作られた。
語釈
"こうもり"、"福牡丹"といった団十郎の家紋を詠みこんで、江戸へ帰さないとひいき連中の願いをこめた歌である。
でてきた浜は北浜でなく道頓堀筋と道頓堀川にはさまれた狭い地域のこと。

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心して

歌詞
心して 我から 捨てし 恋なれど
せきくる涙 こらえかね
憂さを忘れん 盃の 酒の味さえ ほろにがく
解説
小唄 本調子。昭和15年(1940)河上渓介作詞 春日とよ作曲。川口松太郎作の新派狂言「鶴八鶴次郎」から作られた。新内語りの鶴次郎は名コンビとうたはれた鶴八の幸せを願って、心にもない悪態をついて別れる。そして一人で苦い酒を飲む。幕切れの台詞「おいらァ新内は大嫌いだ」は有名。
語釈
苦い酒を一人で飲む鶴次郎の真情が歌はれる。

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御所車(香に迷う)

歌詞
香に迷う 梅が軒端に 匂い鳥
花に逢瀬を 待つとせの 明けて
嬉しき懸想(けそう)文(ぶみ) 開く初音の はづかしく
まだ解けかぬる 薄氷 雪に思えば 深草の
百夜も通う 恋の闇 君が情の 仮寝の床よ
枕片敷く 終夜(よもすがら)
解説
上方端唄 二上がり。
天保年間(1830-44)に流行。作者不詳。
梅や鶯、薄氷など春の訪れを感じさせる題材を用いて恋心を上品に歌っている。うた沢には「香の迷う」の題材でとり入れられている。
落語「軽業」で、はめものとして使われている。
語釈
御所連 牛連の俗称。
香に迷う 梅は色より香を尊ぶ風潮あり、「古今集」にも"色より香こそ あわれと思ほゆれ 誰が袖触れし 宿の梅ぞも"(読人しらず)などと詠まれている。
懸想文 恋文。懸想は思いをかけること。
初音 その年初めての鳴き声。この歌では男女の営みにかかる。
枕片敷く終夜 愛する人と終夜共寝したの意。

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御所のお庭

歌詞
1. 御所のお庭に右近の橘
左近のささささ 福ふくらららら
2. 右大臣 左大臣 さささ 緋の袴はいたり
官女 官女 たちたち
3. 雪はちらちら 子供は喜ぶ
大人はかじける 犬めはとんでやがる
4. 雪をこかして さささ ほうきではくやら
屋根の雪や 竿でかく
5. 下の東寺の 羅生門には
かぶらぎ童子という 鬼や住むげな
6. 渡辺の綱のかぶと さささ ひっつかんで
舞い上る たち抜き はなして 腕(かいな)切る
解説
上方端唄 二上り。
文化4年(1807)刊「粋弁当」四編に所収。
語釈
元歌は京都御所の紫寝殿前にある右近の橘と左近の桜を軽快でリズミカルに歌っている。替歌も多い。踊地としても、よく演奏される。
南地(大阪)と上七軒(京都)、両方を収録。ところによって、ちょっと変化する例の一つ。

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五万石

歌詞
1. 五万石でも岡崎さまは ハアー よいこのサンセ
お城下まで舟がつく ションガイナ ヤレコリヤ 舟がつく 
お城下まで舟がつく ションガイナヨーイヨーイ
ヨイコノサンセ まだまだ ハヤソー
2. 目出度めでたの 若松さまよ ハアーよいこのサンセ 
枝も栄えて葉も茂る おめでたや ヤレコリヤ 葉も茂る
枝も栄えて葉も茂る おめでたや
ヨーイ ヨーイ ヨイコノサンセ まだまだ ハヤソー
解説
端唄 うた沢 小唄 民謡 二上がり。
天保4年(1833)「小唄のちまた」に名古屋で流行した歌として「五万石でも岡崎殿さををいををい城の下まで舟がつくゑらい物じゃゑらい物じゃえ」の歌詞がでている。

語釈
岡崎 愛知県中部にある市。徳川家発祥の地でもと本多市の城下町。

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金毘羅船々

歌詞
こんぴら船々、追手(おいて)に帆かけて、しゅらしゅ しゅ しゅ 
まわれば四国は讃州那珂(サンシュウナカ)の郡(コオリ)
象頭山(ソウヅサン)金毘羅大権現 ひとつまわれば……。
解説
香川県民謡。余興ゲームあり。拳の一種。
金毘羅は金刀比羅宮(コトヒラグウ)のこと。香川県仲多度郡にある琴平山(象頭山)の中腹にある神社。古来舟人の信仰厚く、毎年10月10日の大祭は盛大。
琴平町を中心に歌われたお座敷歌。作者、年代不詳。
語釈
こんぴら船は、金毘羅参詣客のための乗合船。
金毘羅さんと親しまれ航海の安全を守る神として船人が崇拝した。

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最終更新:2016/2/10 | 公開:2014/11/6