上方座敷歌集成 目次 あ行一覧
青柳(アオヤギ)
- 歌詞
- 1. 青柳のかげに誰やら居るわいな
人ぢやござんせん 朧月夜の
エー 影法師
(合)あなたに捨てられて 死のうと思ったが
日にちが薬で 又出来た。ハイその通り
- 2. 青簾(アオスダレ) 風が悋気(リンキ)で すだれまく
あれさおよしよ 人が見ている
エー 膝枕
(合)あなたに落籍されて 一家の主婦となり
丸髷姿で日を送る。ハイ嬉かろ
- 解説
- 端唄。明治19年(1886)「加賀鳶(カガトビ)」(河竹黙阿弥作)初演時に死神の登場に用いられた歌という。「粋の種本花山帳」(1888)に歌詞が見える。
- 語釈
- (合)はお座敷で粋(酔)客の手によるものと思われる
- 1. 2. とも粋な歌詞に色里の情緒がこめられている。
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秋の夜
- 歌詞
- 秋の夜は 長いものとは まんまるな 月みぬ人の 心かも
更けて待てども 来ぬ人の おとずるものは 鐘ばかり
数ゆる指の 寝つ起きつ わしゃ照らされて いるわいな
- 解説
- 端唄 うた沢 本調子。
安政4年(1857)刊の「哇(はらた)、松の声」以降の歌本に掲載.
舞地として使われ、しっとりした雰囲気で芸妓衆が踊るが、お座敷遊びとしてすり鉢とスリコギで虚無僧になり、鐘ばかりでひとつすり鉢をたたく余興あり。
- 語釈
- 澄みきった秋の空月はこうこうと輝いている。聞こえてくるのはいつもの鐘。待てどくらせど恋しい人はあらわれない。こんな気持ちを表現した曲である。
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浅くとも
- 歌詞
- 1. 浅くとも 清き流れの杜若(かきつばた) とんでゆききの 濡れつばめ
覗(のぞ)いてみたかや 編笠の 顔が見とうは ないかいな
丁稚が横丁ですべりこけたせつ背中に千両箱
(丁稚が横丁でへんずりかいて かいたその手でつまみ食い)
- 2. 小夜ふけて 雪はしんしん むこうあらし おもての格子を とんとんと
慈悲じゃ情けじゃ ここあけて 今宵逢はねば こがれ死に
ひちはちおいても構やせぬ 好いた同志の差し向い
- 解説
- 端唄、うた沢 本調子
歌舞伎の「鞘当(さやあて)」を織りこんでいる
嘉永4年(1851)に立女形になった岩井粂三郎(後に八世岩井半四郎)にかけている。岩井家の俳号の杜若や、名古屋山三の編笠、衣装を特徴づける濡れつばめなどを織りこみながら、苦界の女性の真心を歌った曲。( )で囲んだ囃子は、お座敷特有のザレ歌。
- 語釈
- 2. は切ない女の真心を歌ったもの。
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有明の
- 歌詞
- 1. 有明の灯(とぼ)す油は菜種なり 蝶が焦がれて逢いにくる
もとをただせば深い仲 死ぬる覚悟で来たわいな
- 2. 気休めか だます心か 知らねども 今朝の別れに しみじみと
辛抱せよとの一言が 頼りなき身の力草
- 解説
- 俗曲 明治29年(1896)頃から流行。本調子。
しっとりとした情感の溢れる曲。全国で流行した。
- 語釈
- 1. も2. も、愛し合う男・女の切なさ辛さが歌われている。
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いざさらば
- 歌詞
- いざいざさらば 楽しき今宵
燃えるような ウイスキーに のどうるおして
熱いキッスを とりかわしつつ
ぜんまい巻き巻き 乳を吸い
まともか 横か 茶臼か はおか
あなたのきままになる私
親父の目玉も 浮世を忘れ
人生の快楽に ふけりましょ
- 解説
- 戦後の混乱期(朝鮮動乱)の特需景気の頃に歌われたようだ。ナンセンスな春歌とでもいうべきか。
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潮来出島
↓続き
- 歌詞
- 1. 潮来出島の真菰(マコモ)の中で
あやめ咲くとは しおらしヤ
- 2. 宇治の柴船早瀬を渡る、
わたしや君ゆえ 登りつめ
- 4. 花は色々五色に咲けど
主に見かえる 花はない。
- 解説
- 上方端歌。もと茨城地方の民謡の潮来の舟歌だった。
上方では寛政の頃(1789-1800)から座敷歌化され「粋弁当」第3編などにも「潮来替歌」が収録され座敷歌として流行した「はやり歌」が、さらに「はやり端歌」として自然伝承されて現在に至っている。
「粋の懐」(河内屋出版)その他の類書に「上方端歌」として数多くの替歌が記載されている。
(語釈)真菰の ま は接頭語5。水辺に茂るススキとアシの中間のような草。
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伊那節
- 歌詞
- 1. ハアー 天竜下れば しぶきがかかる
持たせ やりたや 持たせ やりたや
檜笠 ヨサコイ アバヨ
- 2. ハアー 桑の中から 小唄が洩れる
小唄聞きたや 聞きたや小唄
顔見たや ヨサコイ アバヨ
- 解説
- 長野県伊那地方の民謡。御岳節とも。
- 語釈
- 檜笠は、ヒノキを薄く削って網代に編んで作った笠。晴雨兼用。
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うそとまこと
歌詞
1. うそとまことの二瀬川、だまされぬ気でだまされて末は野となれ山となれ
わしが心は君ゆえならば三又川の舟の内。思いの丈を(心の内)お察し
2. 行くも帰るも五條坂寒さにつけて酒一つそれが互いの縁となり
たしか編笠景清さんと清水坂の別れ路もはかない縁とお察し
解説
上方端歌、端唄、下座唄、本調子2. は替歌
語釈)
二瀬川 二つの瀬がある意から裏と表があること
1. は男と女の愛の確執を歌ったもの
2. は悪七兵衛景清になぞらえてはかない人間のふれあいを歌っている。
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梅が枝の手水鉢
- 歌詞
- 梅が枝の手水鉢
たたいてお金が 出るならば
もしもお金が 出るならば
その時や 見受けをそれ頼む
- 解説
- 俗曲。明治11年(1878)頃から歌われた。仮名垣櫓文(かながきろぶん)の作。歌舞伎「ひらがな盛衰記」に登場する遊女、梅が枝が手水鉢を無間の鐘になぞらえて、ひしゃくで打とうとすると、空中から小判の降ってくる場面を歌っている。
- 語釈
- 手水鉢 手水は手洗、洗面。手水場は厠便所になる。手水鉢は手水用の水を溜めてある容器。
見受 遊女などを金を出して奉公先から引き取ること。
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梅に鶯
- 歌詞
- 梅に鶯 ほうほうほけきょ
昔しや 鳥のほうから 泊りにきて
さえずったれど これまぁ今ぢゃ
鳥が さかりが過ぎた 愚痴をいう
- 解説
- 小唄 本調子。
- 語釈
- 梅の鶯 とりあわせのよいことのたとえに使われる。
早春の訪れをパロディー風に歌っている。
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梅にも春
- 歌詞
- 梅にも春の色そえて 若水汲みか
車井戸 音もせわしき 鳥追いや
朝日にしげき 人影は 若しやと思う 恋の欲
遠音神楽や 蚊とりの 待つ辻占や ねずみ鳴き
逢うて嬉しき 酒機嫌 こい茶が 出来たら 上がりゃんせ
- 解説
- 端唄。うた沢 本調子。
成立年代不詳、高橋桜州作詞 作曲。井伏鱒二著、「三味線唄」による。
- 語釈
- 若水汲み、鳥追い、遠音神楽など東京の正月風景を歌った曲。
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梅は咲いたか
- 歌詞
- 1. 梅は咲いたか 桜はまだかいな
柳や なよなよ 風次第
山吹や 浮気で
エー色ばっかり しょんがいな
- 2. 柳橋から小船を急がせる
舟はゆらゆら棹次第
岸から上がって土手八丁
エー吉原へご案内
- 解説
- 端唄、流派によっては小唄にも。
- 語釈
- 1. 春の訪れにかけて、粋な気分を歌っている
- 3. 猪牙舟(チョキブネ)に乗っての廓(吉原)遊びを歌っている。
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梅ぼし
- 歌詞
- 1. 皺(シワ)はよれども あの梅ぼしは
色気はなれた 粋なやつ、
いっちょせな 気はある
- 2. 色は黒うても 浅草海苔は
白いおまんまの 肌に添う、
いっちょせな 気はある
- 解説
- 作詞作曲年代不詳。いつとはなしにお座敷で歌われた。替歌もいろいろあるようだ。
- 語釈
- お座敷特有の春歌の一つ
- 1. は年増の色気を梅ぼしに託している。
- 2. は黒と白で営みを表現。
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越後獅子(五段返し)
- 歌詞
- 東西東西 口上いい、ちょいと出て 大序の幕明け
桜の花見 若殿太夫、家老、家者引道具 壁切破り曲者待ったと
提灯ばっさり、さりとは残念な、
二段目あくれば上使のお入り
宝の紛失ゆえ、春太郎 切腹おしとどめ、
叔父御の悪事を見出したる家老一角、
姫の輿入れ日延べする。
黒装束 鉄砲ねろうて 松の木目当てに 手裏剣ばっさり 落ちたところが
どっさり ちょんの幕。
三段目の世話傷の立役、畳をあぐれば 主人の眼病に、我が子の血汐を
真珠を飲ませば どろどろ怪し、四段目あくれば雪の山、
忍びいる妹背の香包み 奮い立ち退いたか、
はて口惜しや つけ狙う捕手を はっしと追うて行く、
五段目松原たいまつ 首尾よく敵の首討ち取って
宝奪い返して その塩を立つ
トンカラ トンカラ鐘うつ 評判たのみます。
お客が戻って 芸者や舞妓で大騒ぎ
散財しょ居続けしょ。
越後獅子(赤ゲット五段返し)
- 歌詞
- 洋行はやりもの 権兵衛も太郎兵衛も 発ってゆく。
支度は唐物屋で その身は茶々目茶苦茶
向こうへ着いたら 着られもせぬよな洋服あつらえて得意顔
西洋なんぞで 履かれもせぬよな 靴はいて 赤地のネクタイ胸にはバラ、
眼鏡をかけて はめたこともないキッドの手袋 ちょいと握り
気障なステッキを腕にかけ いざや出かけましよ、吸いつけない葉巻をくわえ
鞄をしこたま持って ステンショにかけつける、新橋駅では義理ゆえ集まる見送り人
ではご無事で お早くご帰京と、まさかこのまま 帰れもすまいと
五銭自腹切る
列車の中ではすましていたが 船に乗りゃ あまりの広さに びっくり仰天
自分の部屋の番号忘れ うろうろ探す お名残惜しいが 出帆時刻の鐘がなる。
桟橋の上には仇姿 人目忍んで ハンカチ振りゃ
甲板でも、泣きの涙でさようなら。
サンフランシスコへ着いたはよけれど 英語は知らぬ
チンプンカンプンで シカゴやニューヨーク、ボストンなんぞで宿をとり
日本人のお世話になってイギリスへ渡り ロンドン見物しているうちに
とうとう首尾よく迷子になって
巡査は支那の公使舘へ 連れてゆく いずくの土地でもすることなすこと
話の種となり そのくせ日本へ帰れば 知らぬ顔。
ウィルソンもクレマンソーも みんな我輩のフレンドなんぞと
ぐっと反身(ソリミ)になって ステッキ振りまわす 浮かれ浮かれて面白や。
越後獅子(関西湊町)
歌詞
関西湊町 チョイト汽車に乗り
今宮過ぐれば 天王寺が見ゆる。
平野、加美、柏原、王子、法隆寺、郡山、
奈良に着して 人力雇うて
春日に参詣す。そこを左にとって
三笠山、名物 鹿の角細工に菊一文字
ござれ参りましょ。二月堂に参詣して
坂をたらたら下れば 大仏鐘の音
トンカラ トンカラ トンカラ トンカラ
しころ打つ 評判たのみます。
お客は戻って芸者や舞妓で 大騒ぎ 散財しょ
解説
長唄変化舞踊曲。文化8年(1811)。中村座で三世中村歌右衛門初演の七変化「遅桜手尚葉七字」(オソザクラテニハノナナクサ)の一。九代杵屋六左衛門作曲「何たら」の踊地の替歌。
越後獅子(五段返し)
歌舞伎の有名狂言からいろいろな物語を取り入れている。時代物は原則的に五段構成である。初段は大内や神社など儀式的な場、二段目は修羅で戦いの場面が多い、三段目は愁嘆場で身代わりと切腹の悲劇がくりひろげられる。四段目は、華やかな場面やドラマチックな事件を描4く。五段目は大団円で目出度し目出度しで幕となる。
越後獅子(赤ゲット五段返し)
五段構成をもぢりながら、明治の風俗を皮肉って面白、可笑く出来ている。(アテ振あり)
越後獅子(関西湊町)
関西線開通を祝ってつくられたようだが、替歌の作者は定かではない。歌詞もいろいろあるようだが末尾の一節に"落ちゆく先は尻の穴"というのがあって「伊賀越道中双六(沼津)」の股五郎が落ちてゆく先は九州相良をもじってるあたりがお座敷らしいといえよう。
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縁かいな
- 歌詞
- 夏の涼みは両国の 出船 入船 屋形船
上る流星 ほしくだる 玉屋がとりもつ 縁かいな
- 解説
- 俗曲 本調子
元歌は端唄の春の夕べ。明治23年(1890)大阪から上京した徳永里朝(徳寿一)が寄席で歌い、翌91年大流行した。替歌も多い。
(元歌の歌詞)
春の夕べの手枕に しっぽり降る軒の雨
濡れてほころぶ山桜 花がとりもつ縁かいな
- 語釈
- 両国の勇壮な花火を男女の縁にかけている。
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エンヤラヤ節
- 歌詞
- エンヤラヤノ エンヤラヤノ エンヤラヤノ エンヤラヤ
エンヤラヤの声聞きゃ気が勇む
娘十七八や ポストでござる 赤い顔して 入れさせる。
娘十七八や 車掌でござる 奥へ奥へと 入れさせる
娘十七八や 宿屋の障子。どこのどなたが 破るやら
- 解説
- 元歌は長崎県平戸島の船漕ぎ歌。エンヤラヤは船漕ぎの掛け声がはやしになった。
(元歌)
エンヤラヤノ エンヤラヤノ エンヤラホイノサー
月は傾く平戸の瀬戸に いさな捕る子の 魯の早さ
替歌は他にも数多くあり。
- 語釈
- いずれも性的比喩のみ。春歌。
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お伊勢参り
- 歌詞
- 1. お伊勢参りは 石部の茶屋で 逢ったとさ
可愛い長右衛門さんの 岩田帯をしめたとさ
エッササノ エッササノ エッササノサ
- 2. 明日の日曜は 行こか宝塚 きっとだよ
午後の1時半に 梅田阪急で 待っててね
エッササノ エッササノ エッササノサ
- 解説
- 小唄。1. は元唄。小唄の入門曲として有名、替歌も数多い。作者不詳。
- 1. は題材を「桂川連理柵」からとっている。
14、5才のお半が、40歳近い長右衛門と年齢差のある男女が心中する物語。
- 語釈
- 石部は東海道石部の宿(シュク)、現在の滋賀県甲賀郡石部町。岩田帯は妊娠5ヶ月の戌の日に、胎児の保護を願って締める帯。ここではお半の妊娠を表している。
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大阪音頭
- 歌詞
- ハアー 花の大阪よい港 だいて黄金の宝舟
寄せて文化の宝舟
そやないか そうだっせ ハアー
ほんにえらいこっちゃ そやないか(囃子くり返し)
ハアー 梅田ちょいと出りや天満橋 二人揃うて中之島
なかのよいよい中の島
ハアー 五座の櫓のたつころは 道頓堀から春霞 ハアー 千日前から春霞
ハアー 出船入船 かたよせて
のびる りゅうごく人の波
あける りゅうごく人の波
- 解説
- リズミカルなはやし言葉が歌いやすく、全国的で歌われた。
- 語釈
- 中のよいよい中之島。五座の櫓のたつ頃はとか、大阪の賑いを見事のおりこんでいる。
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鴨緑江節
- 歌詞
- 1. 朝鮮と満州(支那)の境のあの鴨緑江 流す筏は アリャ よけれども ヨイショ
雪や氷に ヨ コリャ 閉ざされてョ 明日はまた 安東県(あんとうけん)に着きかねる
チョーイ チョーイ チョーイヤナ チョイ チョイ
- 2. 新所帯燃えない かまどに焚き火をくべてェ ヨイショ ヨイショ
「オイ煙いじゃないか」
「だって燃えないんですもの」
叱らず教えて アラ頂戴な ヨイショ
三味線持つ手にョ アラ 火吹き竹 褄(つま)とる マタ 教えて エエ 頂戴な
チョーイ チョイ チョイヤナ チョイ チョイ
- 解説
-
- 1. は元歌2. は替歌。
元歌の作詞は岡田三面子.
鴨緑江節は鴨緑江を下る筏乗りの歌として大正7年(1917)頃,
満州帰りの梶原華嬢が浅草で歌って以来流行した。
替歌は春歌が多い。
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お互いに
- 歌詞
- お互いに 知れぬが花よ
世間の人に 知れりゃ 互いに
身のつまり あくまで お前に
情たてて 惚れたが 無理かえ
(しよんがいな 迷たが 無理かえ)
- 解説
- 小唄 本調子。かっこ内は省くこともある。
- 語釈
- 道ならぬ恋心をさりげなく歌ったもの。
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落ちてるよ
- 歌詞
- 1. 落ちてるよ ハアコリヤコリヤ 落ちてますよ
マルキのパンが落ちてるよ
拾ってみたら馬の糞やったし
- 2. 落ちてるよ ハアコリヤコリヤ 落ちてますよ
牛皮のがま口が落ちてるよ 喜んで
拾ってみたら電車にひかれたひき蛙やし
- 解説
- 昭和初期1930年頃新町、堀江廓で歌われた。
- 語釈
- マルキ号パン総本店は、堀江に大きな工場を持ち、電気科学館の北隣でミルクホールを併営する大坂有数のパン屋。薄手の包装紙が人気を呼んで、戦前の大阪では知らぬ人がない位繁盛した。
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乙にからんだ
- 歌詞
- 1. おつにからんだ いがみの権太
小石投げたか ほどのよさかね
- 2. おつにからんだ 垣根のへちま
ぶらりと下った ほどのよさかね
- 解説
- 江戸小唄。本調子。
- 語釈
- いがみの権太 歌舞伎の「義経千本桜」すしやの段(三段目)で、自分の命と妻子を犠牲にして、主筋の平維盛一家を救う、悲劇のヒーロー。
- 2. は、上方で生まれた替歌。
ほどのよさ 調子が良い。愛想が良い。
乙(おつ) 気が利いている。
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おてもやん(宗旨)
- 歌詞
- 夕べ夜中に坊主が六人 夜這いに来やんした
ずぼ なんしにきやんした
なんしに来たとは 胴欲な お前のおそそを借りに来た
宗旨を言わなきゃ こちゃ貸さぬ
門徒に法華(ほっけ)に浄土宗 天台 真言 黄檗(おうばく)宗
そんな宗旨は こちゃ知らぬ
すぽぽん ぽんと蹴りゃ 手鞠の音がする
日中は日の中 山中(さんちゅう)はやまなか 今は夜中で ぼぼするさなかぢゃ
とこ丹波の篠山 笹わら 笹だらけの笹の中
猪しゃ豆食て ふうらふら ふらふらするのは
なんじゃいな 風鈴 金玉 星かぶら
操り人形に 葡萄(ぶどう)棚 さあさ ふうらふら
- 解説
- おてもやん(蛸、巾着)に既出。
- 語釈
- お座敷春歌の一つ。
夜這い 夜中に恋人の許へ忍んでいくこと。
大らかな性描写を、リズミカルに表現している。
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おてもやん(蛸、巾着)
- 歌詞
- 夕べ島原で姫を十人ばっかり 買うてみたではないかいな
蛸・巾着(きんちゃく)・土器(かわらげ)・かんぬき・
愛宿山(あたごやま)、上つき 下つき 毛ながに前垂れ なかで良いのが マー饅頭ぼぼ 中細りの胡瓜(きゅうり)まら
くるりいと入れたなら ハアハア
よさよさ 泣く泣く もっちゃげた
- 解説
- 熊本地方の民謡元唄も全国的に流行。その後数多くの替歌が作られた
(元唄)
おてもやん あんたこの頃嫁入りしたではないかいな、
嫁入りしたこたしたバッテ ンご亭どんが菊石畑(ぐざっぺ)たるけん
まあだ盃や せんだった。村役、鳶役 肝入りどん、あん人達がおらすけんで
あとはどうなとキヤアなろたい
川端町ッアン キヤアめぐろ 春日南瓜どん達ァ しりひっ張って 花盛り花盛り
ピーチク パーチク 雲雀(ひばり)の子
ゲンパク茄子(ナスビ)の イガイガドン
- 語釈
- おてもやん 熊本地方で下種な女の蔑称。
島原 京都の島原遊郭のこと。
蛸から饅頭まで 女性の6秘所をさす。
お座敷芸の一つ。
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降りてゆく
- 歌詞
- 1. をりてゆく花のさかりを
あとに見て 山で洒落よか
船にしようか 大海はこちゃ嫌い
- 2. 朝帰り主を帰したその後で
ひとりしょんぼり、ものあんじ
だいたんな茶碗酒
- 解説
- 小唄
- 語釈
- 大海は、大きいことを表現。ここでは閨房にかけている。
ものあんじも大海と同様の意。
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最終更新:2016/2/10 | 公開:2014/11/6