日本語要旨
田井竜一・増田雄
2001〜2003年度に実施した、京都祇園祭りの菊水鉾の囃子についての調査報告である。概況、担い手、曲目と旋律パタン、囃子の機会、楽器とその奏法、演奏の実際(身体動作、掛け声・囃子言葉、囃子の工夫、演奏の実際)、口唱歌・譜、伝承過程、囃子の変遷と意味付け、菊水鉾における囃子の特色という項目にしたがい、詳細な記述をおこなっている。
菊水鉾は、第二次世界大戦後に復活した鉾である。そのため、他の山鉾には無い特色がある。その1つは、月鉾と共通の曲目を、より精緻なものとしてはやそうという指向である。同時に、それとは逆に、月鉾由来の曲を差異化しようとする指向がある。菊水鉾伝来の囃子を復活しようとし、それらが何曲もうまれているのは、その典型的な例である。
もう1つは、ある種の伝統のしがらみから自由であったことから、他の鉾ではまず不可能な改革や新しい制度の導入をおこなっていることである。「三位一体論」のシステムはその代表的な例であり、囃子の習得・琢磨および囃子方という組織のスムーズな運営に対して実績をあげており、囃子における新しい継承方法として注目されるといえよう。
キーワード:祇園囃子、祭礼囃子、山・鉾・屋台の祭り