9 囃子の変遷と意味付け
囃子の変遷
前述のように、笛の調子には通常高い調子と低い調子があり、以前は混在していた。しかしながら、笛の音が高い方が8面ある鉦にまけないし、遠音が良く音も綺麗である
ということで、昭和63年(1988)頃から高い調子にそろえるようにしている。
囃子のテンポが全体に一時速くなった時期があった。たとえば〈菊〉を一回りはやすのに、以前は約25秒かけていたのがやがて約20秒になり、ついには約15秒になった。最近、これを約25秒にもどしたという。
意味付け
「祇園祭り・人生・趣味がひとつものである」「祇園祭りは様々な人間とであい、交流し、おそわる場所である。仲間との交流もまた楽しい」というような事柄をかたる囃子方は多い。囃子方には、「囃子とは奉納囃子である。鉾があって初めて囃子がある」という意識がある。囃子がはやされだしてから、必ず鉾がうごくことになっている。すなわち、囃子と鉾の巡行とは不可分な関係にある。
鉾の上から下をみおろしながら囃子をはやしていると、上にのっているという優越感があるという。囃子方にはまず、そうした鉾の上ではやすことができるということに対する優越感があり、その上に囃子をきわめることがくわわる。
囃子の音が一つにきこえなければいけない。8面の音が1面にきこえなければいけないといわれる。前の人をみてはやしていては、8人いれば0.8秒おくれること になる。と同時に、囃子とはズレの面白さである。囃子には遊びの部分があり、3つの楽器に微妙にズレの部分があるから面白いとされる。
ある囃子方は、「自分にとって囃子とは、京都にうまれ、祇園祭りの囃子方であることのプライド、ついでいくもの、そして囃子で1年の経過を感じるもの」とかたっている。