8 伝承過程
二階囃子稽古の際には、町内の子供や囃子方の子弟が町会所にきて、あそんだり、ねそべったりしている。こうして囃子になじむことによって、男子は所定の年齢になると自然と囃子方になっていくのである。
囃子の習得は、基本的には、目・耳・身体でおぼえこむことを基本としている。鉦では、まず先輩の鉦方が、前述の鉦の打ち方の基本型をおしえる。後は囃子をききながら、先輩の打ち方をみておぼえていく。かつては、カネスリでひっぱたかれるといった厳しい指導であったが、現在では先輩が新入りのカネスリをもったり、口唱歌を一緒にうたったりといったこともおこなわれている。
太鼓も同様で、基本的には、先輩の打ち方をみておぼえていくしかない。楽器や練習の順番が限られているため、他者のうつのをみながら、膝をうっておぼえることもある。なお、太鼓には個人の流儀というものがあり、それを先輩から後輩へ継承していくという意識が強い。
〔 写真 17 〕太鼓の習得
笛は、まず床に 30分間正座できるかどうかが要である。それができないようであれば、笛方にはなれない。その次に、笛を縦吹きさせて、音がでるかどうかをたしかめる。さらに、15秒間、息をだせるかどうかをためす。それで初めて、笛の習得をゆるされる。笛は、前の人の手をみて、音をききながらおぼえていく。先輩に教えをこうても、「前の人をみろ」といわれるだけである。
20年位前から、毎月24日(後祭りの日、ただし7・8・12・1月は休止)に、月稽古をおこなっている。以前は、囃子方は祭りの終了後の1年間、互いにあうことがなかった。1年振りでは、よほど稽古しないと無理である。月稽古をおこなうことで、音感が良くなり、早くおぼえられるようになったという。
二階囃子稽古や本番中でも、幹事 (囃子方代表・笛責任者・太鼓責任者等) を中心とした指導者から、囃子に関しての様々な注意が囃子方にあたえられる。 さらに、北観音山の囃子を調査した小西潤子は、囃子方の現役をしりぞいた人が、自宅の座敷で二階囃子稽古をきき、練習をおえてかえってきた子供達に、その日の囃子の批評をおこなう事例を報告している[小西 1989:59]。こうした囃子に対する熱意が、囃子方の育成に寄与している。
〔写真18〕 聴き耳をたてる囃子方幹事