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京都市立芸術大学
Research Centre for Japanese Traditional Music
Kyoto City University of Arts
平成14年度第1回公開講座は「「平家物語」の中の音楽 その1」と題して,平成14年12月7日(土)に法住寺の阿弥陀堂を会場にお借りして開催しました。
あいにくの雨天にもかかわらず,往復葉書で申し込まれた熱心な方々約90名でお堂が埋まり,静かに講演と平家詞曲の弾き語りに 耳を傾けました。通常は閉ざされている後白河法皇像の御厨子も,住職のご厚意で特別に開扉していただき,おごそかに名号の流れる開幕でした。
まずはじめに,日本伝統音楽研究センターのスティーヴン・ネルソン助教授が,一ノ谷で没した平家の公達(きんだち)経正に焦点をあて,「琵琶弾きの経正」と題して講演しました。経正の生い立ちや音楽の手ほどきを受けた相手,琵琶の流儀や秘曲,都を離れるにあたって仁和寺の守覚法親王のところに琵琶の名器「青山」を返しに行った背景や人間関係についても,新しい考証内容を加えて解説しました。
次に,前田流平家詞曲を全段伝承している新井泰子氏が,琵琶の名手の経正を描いた「竹生島詣」と「経正都落」の段を、ネルソン助教授がそれぞれの曲目解説や聞き所の説明をした後で演奏しました。配付資料には詞章も記してありましたが,耳から味わう文学と音楽を堪能していただけたかと思います。
講演と演奏が終了した後,法住寺よりぜんざいと煎茶がふるまわれました。美しいお庭を拝見しながら,演奏の余韻をうけて話をする輪があちこちにでき,またの機会を要望する声がありました。
なお,研究センターとしては初の試みでしたが,参加費1500円を納めていただきました。
上野学園大学在学中に平曲と出会い,1992年全200句を橋本敏江氏より習得,1998年館山宣昭氏より相伝を受く。1995年,お茶の水女子大学大学院修士課程修了。修士論文は「津軽藩における平曲の摂取と伝承」。真言宗豊山派寶玉院にて全句を語り通す会を年5回開くなどの演奏活動をするほか,後継者の育成に努めている。宗教法人寶玉院附属日本伝統音楽研究所所長。NHK文化センター弘前教室・さいたまアリーナ教室講師。